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ジーンズは、スタイルやテイストが多様化されてはいるものの、根本的な部分では今も昔も変わりなく、その誕生以来いつの時代にも愛される、既成服の最高傑作と呼ぶにふさわしいアイテムであり、素材となるデニムは、独特の耐久性と消耗の速度によって、オーナーの日常とともに時間を刻んでいく。

膨大な数のオリジナルと呼ばれるブランド、なかでもオールデンのモディファイドラストを世界的に流通させたことで有名なフランス人ピエール・フルニエが率いる、フランスのセレクトショッブとして名高いアナトミカの新作は、ジーンズ及びデニムの特性を最大限に引き継いだ上で、その他の諸要素をスペシャリティなレベルへと押し上げ、近年稀に見る完成度に達している。いわゆる蘊蓄はいくらでもあるのだが、ここでは製品を構成する上で欠かせない要点に絞って述べる。

第一の特徴は、このブランドのスタンダード的なポジションに立つパンツ、ロット＃618のシルエットである。品番の由来は、人類が古くから美を生み出すために様々な分野で応用し続けている黄金比（1:1.618）から引用した3つの数字であり、この比率がもたらす絶対的な調和や心地よいリズムに近づくことを旨に、理想的なプロポーションへのテストが延々と行われ完成に至ったという。次に採用したデニム地は、本藍で数十回の染めによる深みを持ち、限りなく最高に近い色落ちを確約している。最後にこれらの要素をまとめているのが、数々のオーセンティックなディテールである。このパープルのセルビッチがまさにそれで、ジーンズがジーンズのたる所以ともいうべきパーツにさらに一歩手を加え、ひとつひとつ丹念に積み上げフィニッシングしている。

この拘りは、デザイナーは当然のこと、製作に携わった人々の顔が浮かび上がるほどの徹底ぶりだといえ、この時点まではほぼパーフェクトに近い内容だといっても過言でない。ここから先の解釈はあくまで購入した個々のユーザー次第であり、この時代らしく自由に着こなすことで、さらに多くの魅力を発見することも可能である。

Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato