GUSTAVO LINS
服飾史が誇る2つの遺産を有機的に結ぶ、
限りなく完全に近い構造を得た衣服。
08 12/18 UPDATE
ファッションというよりも広義に服飾の分野を見渡すと、ウィメンズではオートクチュール、メンズではテーラリングが、構造や造形をつかさどる最たるものだといっても過言ではない。どちらも様々な要因が重なって現代まで受け継がれてきた近代服飾史の遺産であるが、残念ながらその確立された技術は、時間の経過とともに行き場を失いつつあり、現実的かつ困難な問題に直面している。
パリのオートクチュール界を中心に活躍するグスタヴォ リンスは、KENZO、ジョン・ガリアーノ、ルイ・ヴィトンらの実質的なテクニカルサポートをした立役者でもあり、いまでは自身のシグネチャーコレクションも発表している。
このレベルの世界で活躍するクリエイターであれば、それなりのキャリアはあるのは当然で、ここから問われるのはあくまで個々の実力であって、これらを具体的に示すひとつが製品力であり、それが持ち得る魅力なのである。
彼が創造する衣服は、女性服の造形美と紳士服の厳格さが共存する、特異なスタイルを打ち出し、プレタポルテのなかでも抜きん出た着心地を有している。これは袖を通ることではじめて理解できることだが、そのレベルの高さは圧倒的なものがある。衣服に限らず、実用の側面も踏まえて完璧なコンストラクションを完成させたのであれば、当然の結果だともいえる。
強いていえば、この味わいは並外れた技術力によるものなのだが、それを全面に押し出さず、あくまでも所作のなかで見せていける技量こそが、本当の意味で評価されるべき点であり、超一流の証明だといえよう。
こうしてグスタヴォ リンスという希有なクリエイターの手によって、服飾史が誇る2つの遺産が有機的に結ばれ、姿や形を変え、時代とともに次の可能性を見出し、新たな文脈を綴っていくのである。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato