Thom Browne
NYファッションシーンの主役がみせる、
揺るぎない主張とスタイルの真価。
08 12/12 UPDATE
ここ数年にかけて、新しい才能をもった数名のデザイナーの登場とともに、NYのファッションシーンは近年稀に見る飛躍的な進歩を成し遂げた。がしかし、いまや流行や消費のサイクルは劇的な変化をみせ、トレンドはおろかスタイルと呼ばれるものでさえ、定着することが難しい時代へと確実に移行している。さらに年々話題性というアドバンテージが薄れゆくなかで、シーンの立役者らは、今度どのような術をもって現実と向き合いマーケットに対応していくのであろうか。
このムーブメントの主役であるトム・ブラウンは、類い稀なる個性の持ち主で、揺れ動く時代であっても、自らのテイストを主張し続け、こちらのアウター類からも彼らしさがふんだんに醸し出されている。
前衛的なニュアンスをつくり上げているのは、第一にディテールによる演出にあり、大胆に貼付けられたグログランリボンがまさにそれだ。素材の選択もユニークで、どこか素朴な風合いも感じさせてつつも、実は贅沢なカシミアを使用している。ここでいかにもなラグジュアリー色を全面に打ち出していない点からも優れたセンスや嗅覚が感じられる。
見方によってはこれらを上回る特徴として挙げられるのが、アメリカの伝統を踏襲し再定義したシルエットである。彼がつくり出すフィッティングは確実に着る人間を選ぶが、それもそれで新しい時代の既成服のあり方のひとつなのだともいえる。
この大不況とともに変わりゆく世界にあって、ファッションというスタイル(=様式)はどのように移り変わるのであろうか。こうした時勢を読み抜く上でも、トム・ブラウンというキャラクターは、ある種の指針としての魅力も兼ね備えた、時代の鏡ともいうべき才能であり、存在なのである。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato
ピーコート
517,650円[税込] (※参考価格)
ダッフルコート
546,000円[税込] (※参考価格)
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