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近年クロムハーツは、オーナー兼デザイナーであるリチャード・スタークが確立したスタイルだけでなく、新作の発表のタームにおいても独自性をみせ、いわゆる世間一般的なファッションのタイムスケジュールとも若干異なり、まるでロサンゼルスの緩やかなムードのように、比較的自由なペースでその都度のリリースを行っている。

コレクションの幅も日を追うごとに拡張され続け、さらに主軸のひとつであるアパレルの分野もより精力的な活動と進展が見受けられる。なかでも一際印象強いのが"スポーツ"と銘打たれたカテゴリーである。

そもそもクロムハーツというブランドは、グローバルなレベルでの認知度と設立から20年近い時間の経過もあって、当然ながらある種のブランドイメージが定着している。だがそうした世論に反して、ブランドと呼ばれるクラスのブランドの懐はそう浅はかな代物ではないという事実を、こちらに用意した2点の新作が見事に物語っている。

では具体的な商品説明から述べると、まずはじめに左側のダウンジャケットは、ブランド初の展開となるフレッシュなアイテム。軽量のグースのフェザーを肌触りのよいラムレザーで包み、仕上げとしてシルバーの装飾的なパーツでまとめている。対になるウィメンズのモデルはフードにファーが付く仕様で来年入荷予定とのこと。一方、軽快な装いのナイロンベストは、レザーパッチや背面にも取り付けられたファスナーの配置など、細かいディテールもさることながら実用面や利便性にも長け、シーズンレスな活躍が期待できることも長所として挙げられる。

さらに追記するならば、彼らはこの新コレクションにおいて、根幹に流れるフィロソフィーはそのままに、新境地ともいえる鮮度の高い製品を打ち出すことで、この場で改めて自らのクリエイションの本質をユーザーに再提示しているのである。

またこれらの製作にあたって、先日リチャードの友人でバイカーであるティム・メドヴェッツが、エヴェレストの登頂に成功したことも、多大な影響を与えていることに違いない。

いうなれば、こうした飽くなきチャレンジこそが、クロムハーツを次なる進化へと導いており、これこそがブランドの設立以来続く揺るぎない創作へのスピリッツなのだといえる。

Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato