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21世紀がはじまり早くも10年近くが経過し、いまやメンズファッションの世界は大きな変革の時期を迎えつつある。数いるトップデザイナーのなかで、俄然多くの話題と羨望を集めているのが、モードの帝王として名高いトム・フォードであろう。

かつてグッチ王国を復権に導いた手腕は、新世紀において、どこへと向かっているのであろうか。現時点ではその意向のすべてを把握することはできないが、既にメンズプレタポルテ史上最高クラスのコレクションを手中に収めているということは紛れもない事実である。

プレタポルテの水準をはるかに超える贅を尽くした素材や、伝統のルールを踏襲しつつもモダンさをブレンドさせたテーラリングが作り出すメンズウエアは、彼にしか生み出せない圧倒的な迫力を有している。しかもこの難題をインディペンデントなスタンスで実現しているという行為そのものが脅威であるのと同時に、前人未到の領域に達していることを裏付けている。

彼のコレクションにおいて、シューズというアイテムは、ロングノーズのスタイルや美しいソールによって、コーディネイトを完成させ、エレガンスを醸し出す、必要不可欠な存在となっている。

2008F/Wではさらにバリエーションが充実し、ダンディズムを感じさせるタッセルローファー、ヴィンテージ感とモード色の強いグラデーションのローファー、アウターウエアと相互するトレッキングブーツ、確かな実用性を備えた超高額のファーブーツなどなど、美的外観を作り上げるだけでなく、ある種の豊かさをも醸し出している。

とにもかくにも圧巻の仕上がりであるが、これらを形成する上でなににも勝る最重要ファクターこそが、徹底的な完璧主義と強烈なセンシュアリティであり、彼のヴィジョンは、早くもメンズファッションの進化の頂点に位置するクリエイションを完成させ、次の目的地へと歩を進めている。

Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato