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キャリア10年を越え、モード界の異端児リック オウエンスは、さらにパワフルに躍進する。そのコレクションは、過激な表層とは裏腹に、安定した人気を保ち、ここ数年間、話題性とセールスのバランスをうまくキープし続けている。これを可能としているのは、アメリカ的な実用主義と卓越した技術力による産物だともいえる。

最人気を誇るレザーアイテムは、今季も豊富なバリエーションで並んでいるが、鮮度という意味でもっとも目を引くのが、ムートンを使用したブルゾンやコート類である。

肉厚の毛皮を、類い稀なる造形力で象ることで、メンズウエアの重衣料としては類を見ない、個性的な立体へと整えている。マスキュリンでありつつも、どこかユニセックスな雰囲気が漂い、セックスを創作の重要テーマのひとつとして掲げる、ブランドを象徴するピースとなっている。

また、これらのアウターが、近年勢いを増し続けているロシア圏のマーケットを意識したアイテムであることも、彼がファッションデザイナーとして優れた嗅覚を持っていることを証明している。

Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato