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阪急百貨店メンズ館のオープンとともに、日本初のフラッグシップストアの出店を果たしたトム フォード。これによって、話題のメンズコレクションが、国内での購入が可能となったことは、感度の高いファッションピープルの間ではすでに認知されている。

コレクションの中心は、伝統あるブリティッシュテーラードをベースに、厳格なルールを踏襲しながらも、それらをいかに崩すかということに徹した、高い目的意識によって支えられたクリエイションなのである。

ひとつのスタイルを完璧な形で提案するということは、当然単体のアイテムも抜かりなく作り上げねばならない。そしてこれこそが、超一流のファッションブランドの世界における、顧客との理想的な関係性を築くために、確実にクリアしなければならない重要事項のひとつなのである。

このバッグ2点も上記に該当する逸品であり、それぞれ特筆すべき点を述べると、左側のラゲージは、カーフの地模様をそのまま活かした風合い、もう一方は、明かに常識を度外視したサイズの極太のファスナーなどが挙げられ、どちらにも共通するタフネスなハンドルも特徴的である。これらは、長い開発期間を経て、実用化及び製品化できるレベルへ到ったことは想像しがたくなく、その徹底ぶりからも彼らの創作へ対する揺るぎないプライドが感じ取れる。

そして、技術や製品力の先には、トム・フォードの磨き上げられた美意識や思想が存在する。

ダンディズムの内側にあるのは、彼のクリエイションの根幹をなす最重要テーマである“センシュアリティ”があり、それに伴うように、製品にはマスキュリンな強さと実用性が備わり、フィニッシングとして限りない“エレガンス”が添えられている。

Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato