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ここ数年、トータルコレクションではなく、一部のアイテムに専門性を置いたインディペンデントなファッションブランドが、水面下で増加しつつある。Tシャツやジーンズにはじまり、メガブランドにはない独特の味わいが、感度の高いファッションピープルに刺激を与えている。

アレキサンダー・オルチは、ネクタイのみでコレクションを展開する、NYから発信されるニューブランドである。デザイナーは、在学していたハーバード大学の課題で提出する映像フィルムの作品で使用するシルクプリントのネクタイを作ったことが、ファッションの道への入り口となった。

その後、モノ作りはビジネスへと発展を遂げ、2007年A/Wから、バードルフ・グッドマンとの取引がスタート。と同時にオルチのフィルムディレクターとしての活躍もあって、話題は飛躍していった。

彼はインスピレーションの多くを、映画や音楽、または文学などから受けるといい、ファッション畑の出身ではないからこそのアイディアやユーモアを持って、それらを現実的な形にできるチームとともに、新しいスタイルを世に送り出している。

最終的な段階で、それらがイギリスやベルギー産の味わい深い生地とハンドメイドの素朴な風合いと重なり、きらびらかなものとも違う、ファッションにおける新しい贅沢のあり方を示唆している。

Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato