AVANTINDIETRO
かつてない不思議な感覚が足を包む、伝説のレザーブランドの系譜を継ぐブーツ。
08 4/28 UPDATE
ファッションに限らず、主にデザインの分野において、パッケージデザインは非常に重要な役割を果たしている。優れたパッケージは、製品の販売時または購入後においても宣伝効果を発揮し、コーポレートアイデンティティやブランドイメージの断片を、消費者にスムーズに伝える機能を持っている。とはいえ、いかにこれらを含めたブランディングに長けていようとも、肝心の製品に中身がなければ本末転倒であり、すべては水の泡となる。
アバンティエンヌディエトロは、究極のレザーブランドとして一世を風靡したシーディエムの創設者、マウリツィオ アルティエリが新たに立ち上げたプロジェクトである。
ファッションにおけるミニマリズムの第一人者であるアルティエリの創作は、実験的かつ革新的なアプローチを行うことで知られている。その傾向を端的に提示するのが、前ブランドでも世界的な人気とセールスを誇っていたシューズ類であり、さらなる高みに向かってベクトルを増大させている。
度重なるリサーチと実験によってセオリーを度外視した形状へと変化したブーツは、まさに前代未聞の一品である。バックから内側にかけてツイストするファスナーや、薄くフラットなソールなど、細部のすべてに意味があり、かつてない不思議な感覚が足を包んでくれる。
これらの結果は、表層を整えるスタイリングと、実用性やセールスなどの諸問題を解決するデザインが、有機的にマッチィングした証明だといえ、ファッションアイテムでは非常に稀なケースである。つまり、前述したパッケージングの要素も、製品と同様の一貫性が内在している。
博識と技術でいうよりも自らの経験を糧にケーススタディーを行い限界に挑む彼らのクリエイションは、ミニマムな外観とコンセプトを貫徹するタフネスな精神を宿している。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato