ISAAC REINA
建築学などからインスパイアされる、知性的でミニマムなバッグブランド。
08 4/25 UPDATE
来季2008A/Wからメンズモードでは、衣服によって新しい身体のプロポーションを創るという傾向がより顕著となって現れていく。これは、レディスの世界ではごく当たり前なことであり、強いては西洋の服飾史の伝統に帰する行為でもあるが、実用性やリアリティを強く求める今のメンズファッションにとっては、大きな刺激となりうる可能性をふんだんに秘めている。
これまでになかった独創的なフォルムを構築するには、服作りの基本が完璧にマスターされた上で、プラスαの能力が必要とされてくる。それを行うに当たって、ファッションデザイナーが他ジャンルから学ぶべきことが、建築学やインダストリアルデザインなどの分野のアプローチである。仮に応用できるのであれば、ファッションの常識を覆すコンストラクションを手に入れ、次のステージへの扉を開けることも夢ではなくなり、描いていたマスタープランのすべてがリアルとなる。
建築などから多くのインスピレーションを受けるという、イザック レイナは、知性的な印象のバッグを創造する、専門性の高いブランドである。デザイナーのイザックはスペインのバルセロナ出身。かつては、アントニオ ミロやエルメスに在籍していた強者であり、2006年、パリを拠点に自身のブランドを立ち上げ、現在に到っている。
彼の考案するミニマムな構成のプロダクトは、ファッションアイテムにおける色彩の重要性を浮き彫りにする。人工的で無彩色のブラックを基調とするなら、鮮やかで温かなレッドや攻撃的で冷やかなイエローは、アイテムの性格を変えてしまうほど、シンボリックな役割を果たしている。これらの表現を可能とする素材がレザーであり、これまで培った造詣や技術を、自らの手法へと発展させ、見事な染色と造形を行っている。
決してシンプルやベーシックといった括りではなく、計算し尽くした上で行き着いたミニマリズムを模したクリエイションは、過激な作風の何倍もの迫力と存在感を有し、トレンドの数歩先を捉えている。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato