SANTACROCE
やわらかさとタフネスが相まって完成されたニュータイプのモッズコート。
08 3/18 UPDATE
ここ最近、いくつかのトレンドの流れから、新しいタイプのフード付きのアウターが目立ちはじめている。数年前に、シルエットが改善されたジップアップのスウェットパーカが、レイヤード用のアイテムとして爆発的な人気を集めていたが、この傾向がブルゾンなどに飛び火し、市場での人気とクリエイター側の提案との連鎖反応によって、これまでになかったディテールや素材のミックスアップが起こり、新鮮なアイテムが流通しはじめている。
こちらのコートは、イタリア発のファッションブランド、サンタクローチェによる春の新作。このブランドは、革製品のスペシャリストとして世界的に認知されており、数々のスーパーブランドのOEMを請負いつつも、確固たるコーポレートアイデンディティを形成している。すでに日本での展開から数シーズンが経ち、高品質のレザーブルゾンを中心に話題を集めている。
モチーフとなっているM-51は、通称モッズコートと呼ばれる、メンズファッションの定番であり、数年前から現代的な解釈でリバイバルされた品々が爆発的な人気を誇っている。その多くがブラックを基調にしたタイトフィットなタイプであるが、サンタクローチェ社はそれらと一線を画す仕上がりを見せている。
まず目に留まるのがベージュのカラーリング。流行のフューチャリステックを演出した派手なカラーの製品と比べると色彩効果の狙いが真逆のベクトルで、このトーンによって上質なリラックス感を打ち出している。次に注目すべき点は、コットンにポリウレタンやポリエステルを混紡した素材である。さきほどの色彩の話とは対照的に、ここでは耐久性を重視して生地を選んでいる。つまりは、この2つの異なる要素が相まって、視覚的なやわらかさと衣服としてのタフネスを兼ね備えた、新しいバランスのウエアを完成させているのである。
膨大な数の一流品を生産し続けることで培われた経験は、ファッションアイテムに必要な実用性を計る精度となって、顕著なまでにプロダクトに反映されている。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato