MARCO TAGLIAFERRI
ヨーロッパから見据えた現代的なトラッドへの解答を具現するニット。
08 3/18 UPDATE
この春ようやく開花した現代的なトラッド。この潮流に数多のブランドがこぞって便乗しているものの、一部の抜きん出たデザイナーの台頭とともに、漠然と浮上してきたトレンドということもあって、実際のところ、時代にフィットしているのはごく一部のブランド・アイテムであることは否めない。そのため、実態も見ずに安易に煽ったところで、机上の空論に近いレベルで話が終わってしまうし、仮にすべてをひっくり返すようなパワーがあれば話は別であるが、大半がリバイバル的なものであるため、刺激は正直少なく、どちらかといえばコンサバティブな方向によっている。
では、この流れに乗りながらもリアルに支持を受けている製品の傾向を述べると、ひとつは、モダンなスタイリングにオーセンティックな本質を持っているプロダクト。もう一方は、それ以前までのコンテクストを熟慮しながらも、しっかりと自らのクリエイションを行っているクリエイターの手によるものである。
このイタリアのマルコ タリアフェリのニットは後者に該当する。カーディガン風のディテールと大降りのファスナーを大胆に取り入れ、シンプルなVネックのスタイルに独自のユーモアを加えている。袖を通すと、シルエットは予想以上にタイトかつシャープで、おおよそアメリカ的なものとはかけ離れ、クセがない分スマートで着やすく、受け手の趣向と体型さえあえば、アウターとしてもインナーとしても重宝する逸品なのである。
今季も引き続き、国やジャンルを問わずトラッドを意識した品々が豊富に市場に並んでいるので、先入観や固定観念を持たずに探してみると、予想外のうれしい出会いも期待できるはずだ。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato