Rick Owens
パール×ブラックの色彩効果で新たな進化を遂げた
超人気のレザーアイテム。
08 1/16 UPDATE
リック オウエンスは、いわゆるパリの異邦人を地で行く、類い稀なる才能を持ったクリエイターである。出身はアメリカの南カリフォルニアで、LAに移住後、アートスクールのオーティス・パーソンでファインアートを学び、ファッションのキャリアはパタンナーからスタートしている。1997年に自身のコレクションを発表して以来、ペリー エリス賞をはじめとする輝かしい実績ととも、セレブレティや一流のバイヤーを中心に、質の高い多くのファンを獲得していった。
この独創的なスタイルに多大な影響を与えているのが、数々の革新を起こしファッション史の伝説となった、マダム・グレとマドレーヌ・ビオネという、2人の偉大なファッションデザイナーの存在である。彼は、両者の流れを汲むドレープ感のあるパターンを取り入れることで、レディスには深みを与え、一方メンズにおいては、従来のルール上ではありえなかった斬新なシルエットを創造している。素材に関しても抜かりなく、すべての生地には加工が施され、縫製後にさらに手を加えるという徹底ぶりで、その表情は実に豊かである。
2008S/Sでは、PERAL(※真珠色)とBLACKの2色を効果的に使い、人気のレザーアイテムも新境地に到達している。こちらの2点は、無彩色同士の組み合わせであるため、地の色がブラックの場合はパールが浮き立ち、それが逆転するとブラックはパールに引き込まれていく、といった色彩の効果をうまく応用している。またブルゾンでは、ウオッシャブルレザーとジャジーのコンビネーションによって、他では決して見られないシェイプを完成させている。
こうした製品の特徴よりも、何倍も深みがあって魅力的であるのが、デザイナー自身の個性であり、センスである。仮にそれらが欠落しているのであれば、いかに優れたテクニックがあろうとも、ここまでレベルの高いアイテムは到底創り出せないはずである。つまり、なににも変えられない強烈なキャラクターこそが、リック オウエンスの最大の武器であり、そのエナジーが持つ磁力によって、人々は自然と惹き付けられていくのであろう。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato