CRATE
ブームの終焉でついに登場した、
モダンでタフネスなデニムブランド。
08 1/09 UPDATE
ハイファッションの世界からはじまり、ジーンズの本場アメリカ西海岸で開花し、世界を席巻した空前のデニムブーム。着古感だけでなく装飾的な意味合いで用いられた加工技術と、それまで暗黙の了解でタブーともされていた大胆なシルエットの変更によって、クリエイターの表現の幅が一気に広がり、ジーンズはカジュアルウエアの領域を飛び越え、より優れたファッションアイテムへとランクアップした。
がしかし、当然ながらこの手の創作の源泉には限りがある。もはや作り手のアイディアは飽和状態にあり、消費者のデニムに対する購買意欲も低下しているため、その進化はスローペースどころか停滞しているのが現状だといえよう。
このような状況下であっても時勢に流されず精力的に活動を続けるタフなデニムブランドがいくつか存在する。チャド・ヒルトン率いるLAのクレートは、古きよき時代と現代の相違点を見極め、それぞれの長所をうまく引き出すことで、オリジナリティに長けた提案に成功している。
デッドストックの生地や古いミシンを使い、一切のユーズド加工を断固として拒否する姿勢は、非常に強いポリシーが感じられる。細身のフィッティングを採用しつつも、決してフェミニンではなく武骨なニュアンスを宿している点も大きな特徴である。履き心地にも独特の味わいがあって、いったん馴染むとなぜか自然と履き込んでしまう、言葉ではうまく説明できないよさがある。
聞くところによると、チャドは自らのクリエイションの資質を、写真撮影でいうスナップショットに例えるそうで(※おそらく彼のいうスナップとは、ライカを目の延長として使いこなしたアンリ カルティエ=ブレッソンに代表される芸術写真でもなければ、かってのロバート フランクのようなシリアスなドキュメントでもなく、なにげないアマチュア的なものを指すと思われる)、確かに彼の製品からは同じような魅力が見受けられる。
プロフェッショナルの世界では、なにかを得ると同時に、なにかを失うことが多々ある。その狭間にある重要なファクターを保持しているからこそ、クレートのジーンズはなんともいえない雰囲気を醸し出しているのかもしれない。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato
sally(サリー)27,300円[税込]
corner(コーナー)22,050円[税込]
[問] JACK OF ALL TRADES
Tel:03-3401-5001