精緻な電子ノイズによって聴く者の頭脳をダイレクトに浸食し、意識の変性を促す音楽。いささか陳腐ながら、渋谷慶一郎と彼がオーガナイズするレーベル「ATAK」の音楽を言葉にするなら、そんな表現が理解しやすいだろう。
彼らのサウンドは、一般に「サウンドアート」と呼ばれるコンテンポラリーアートのひとつのジャンルとして位置づけられることもままあり、実際、渋谷はその世界で世界的な注目をあつめているのだが、そうしたジャンルに属する多くのアーティストが「アートのためのアート」を「シーンのための作品」として発表し、活動している印象を抱かざるを得ないのに対し、渋谷は独自の音楽性を進化させる一方で、ポピュラー・ミュージックのシーンをも視野に置いた果敢な活動を活発に行なっている。
とはいえ、彼の音楽が一般のポップミュージックファンにとって「難解」なものに聴こえることは否定できない。しかし、それはなにも複雑で深淵な音楽理論を振りかざしているからではなく、冒頭に記した「聴く者の頭脳をダイレクトに浸食」するものであり、そのため一般にポップミュージックを構成するメロディ、コード、楽曲の構造といった要素をあえて取り払っているからだ。
聴覚を刺激することで意識を変性し、今ある世界とは異なる姿の臨場感を脳内で得ること。それを音楽と呼ぶのであれば、音楽を音楽たらしめていると思わせる諸要素は、単に形式化されたフォームである。であるならば、ATAK=渋谷慶一郎の作品はなんら難解ではなく、むしろ彼の音楽こそ無垢で根源的であると言えるかもしれない。
というわけで、知性と本能をフル稼働させ「音楽」と格闘するATAKの作品をhnyee.Storeで紹介開始。CDだけでなくATAKの美意識を反映させたスタイリッシュなTシャツも入荷。
是非、チェックを!
Text:honeyee.com