東京のクラブ・シーンを代表するアーティストのひとりと言っても、もはや誰からの反論もないであろう有名人、松田"chabe"岳二によるサウンド・ユニットであるキュビズモ・グラフィコ。はや活動開始から9年目になるという。
この「nuit」、前作はカリビアン系の心地よいトラックをセルフ・コンパイルした編集盤的な意味合いの強い「CARRIBIAN ENSEMBLE」をはさんで、2年半ぶりのニュー・アルバム、通算6作目のアルバムになる作品。
「ほら、『歴史は夜に作られる』という言葉があるけれど、確かに夜には何か新たなものが産まれるクリエイティヴな空気に満ちていると思うんです。太陽の昇っている昼間は、来るべきそんな夜を待っている準備時間のような気さえする」と語る彼は、夜~朝にかけてクラブでDJをしたり、ラップトップの前で音を鳴らしたり…といういわゆる夜行性なライフスタイルだそう。
最近はクラブ的なアプローチにとどまらず、キュビズモ・グラフィコ・ファイヴのフロント・マンとして、さらに多くのバンドでのパーカッションを担当するなど、ステージでのバンド活動も盛んな彼であるが、やはりラップトップと、ほとんどすべての楽器を自ら演奏して作り上げていくというキュビズモ・グラフィコとしての活動こそがメインという印象も強い。さらに今年からエスカレーター・レコーズ内で「Keep In Touch」というレーベル内レーベルもスタートさせ、モデルでも有名なCAEDEのデビュー・アルバムをトータルでバックアップするなどプロデューサーとしての活動も盛んだ。また、最近最もエキサイティングだったニュースとしては10代の頃からのファンだったエディ・リーダーをヴォーカルに迎えて新曲も録りおろしたことだとか(これはまた別の機会に発表…)。
そんな多忙な彼にとって、夜はもちろん眠る時間ではない。今回のアルバムは「静かな夜に作りためた曲をまとめたから、タイトルは『NUIT(ニュイ、フランス語で夜の意)』にした」のだという。
真っ黒ながら、ピンクや水色、黄色などのパステル・トーンのカラーが印象的なジャケットのイメージのように、夜のもつ不安やわくわく感を、静けさや優しさで包んだ10のトラックがこのアルバムには詰まっている。
新しいポップ・ミュージックがこの「夜」に生まれる。
Text:honeyee.com