PHOENIX LIVE IN JAPAN “最もスタイリッシュなパリジャン・バンド”、フェニックスの素顔。
07 4/17 UP

フェニックス。トマ、ブランコ、クリスチャン、デック——ヴェルサイユ出身のこのフォーピース・バンドが初めてとなる来日ツアーを果たした。ダフト・パンク、エールといった正統なフレンチの血統を受け継ぐ(ブランコはダフトの二人とともにダーリンというバンドをやっていたし、4人はデビュー前にエールのバックバンドとしてテレビ出演もした経歴をもつ)最もスタイリッシュなパリジャン・バンドであることは、その出で立ちを見ればすぐにお分かりの通り。音楽だけではなくエディ・スリマンやソフィア・コッポラというカルチャー・サイドからの強力なキーワードとともにじわじわとファンを増やしてきた。2006年サード・アルバム「It's Never Been Like That」を発表しサマーソニックでの熱いステージを経て、ついに単独での来日公演が実現したのである。

ステージはアルバムの冒頭を飾る「Napoleon Says」の力強いドラムで幕を開け、逆光のライトに一列に並んだメンバーが照らされる。ヴォーカルのトマの歌声はライヴならではの力強く、さらにあの「フゥン」というかけ声がテンションをあげてくれる。「右手はトレンチコートに」と歌うトマの手はバリ・バレの赤いステッチのピー・コートに。ギターのブランコとクリスチャンは兄弟ならではの息でときにアイコンタクトを送りながら、ステージの左右でギターをならしている。甘いマスクで圧倒的に女性ファンのハートをつかんでいるのは、ほとんどうつむいてベースを弾くデック。夏のサマーソニックから半年ぶりに会った彼は口元に無精髭をたくわえてワイルドになった印象を増した。サポートメンバーとして参加しているのはドラマーのトーマスとキーボードのロブ。6人のシンプルなステージである。

「今回のアルバムでは“ライヴ”での演奏を意識して作っていたんだ」という通り、これまでのアルバムに比べると、よりストレートで力強いポップ・チューンがこれでもかと並ぶサード・アルバム。「Run Run Run」や「Everything is Everything」といったセカンド・アルバムからの名曲を挟みながらも新作を中心にした13曲がたたみかけるように続いていく。後半彼らの出世作ともいえる「If I Ever Feel Better」はイントロのドラムだけで大歓声が起き、お約束の大合唱。続く「Funkysquare Garden」のライヴ・アレンジ、「Sometimes In The Fall」で盛り上げるだけ盛り上げた後、トマの「メルシー、ボークー、ボーク、ボーク」というヴェリー・フレンチなMCとともに、メンバーはステージを後にした。

お約束のファンの熱いアンコールに応えてまず登場したのは、トマとクリスチャンの二人。クリスチャンのアコースティック・ギターで屈指のラヴ・ソング「Love For Granted」、さらに続いて披露されたのはエールがソフィア・コッポラ監督の「ヴァージン・スーサイズ」のために書き下ろした「Playground Love」のアコースティック・カヴァーであった。念のため書いておくと、ヴォーカルのトマはソフィアのパートナーであり、昨年11月にかわいらしいベベを授かったばかり。今やまさに幸せ絶頂期のふたりが初めて出会ったきっかけの時期の曲なのである。

メンバーが揃って「Too Young」そして、最後の「Second To None」ではトマがフロアの中に飛び込んで大興奮のオーディエンスの中でマイクを握り続ける。これは東京2デイズ、名古屋、大阪とすべてのステージも同じ演出で、すべての会場でトマはファンからの熱い歓迎を受けて熱唱した(一部熱すぎた会場もあったのだが…)。90分ほどのセットは本当にあっという間に過ぎて行く、というのはファンならではの感想なのだろうか。

2001年のデビューからもう数えきれないステージをこなしてきたバンド、フェニックス。アルバムのごとに日本でフランスで彼らのステージを見てきたけれど、4人(そして前回から一緒の2人)のステージでの息はおそろしくぴったりだ。これは演奏時間よりも長く時間をかけるサウンドチェックの賜物でもあるのだろうが、照明や演出を含めて“ライヴ”としての完成度はもはや完璧、本当に素晴らしかった。

そして何より、メンバー4人が横一列に並んだその姿のスタイリッシュなこと。言葉では上手く表せそうにもないのだけど、明らかにイギリスやアメリカのバンドとは違う、品の良さのただようたたずまい。それは単に彼らがディオール オムのシャツを着ているとかそういうレベルではなく…。他のどんなバンドにもないファニックスの魅力はこの4人全員のノーブルでチャーミングな魅力に他ならないと感じるのだ。

今年の夏はなんと故郷ヴェルサイユ、それもかのヴェルサイユ宮殿でライヴを行うというフェニックス! 今度はその模様をまた改めてレポートしたいと思う。

 

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