官能的に、力強く、そしてセクシーに歌い上げる。魅惑の歌声を持つジョン・レジェンドはデビュー作『Get Lifted』ですぐグラミー賞3部門に輝き、続く昨年末リリースされたセカンドアルバム『Once Again』も絶好調。もはやスーパースターの仲間入りした彼の来日公演は、国際フォーラムAホール(東京)で行われた。かなりの大箱だ。そんなクラスにまで上りつめたジョンのライヴDVDがリリースされる。その映像には、ライブハウスでありながら、今回の国際フォーラムと同様のパフォーマンスが映し出されている。
「ショー自体はもちろん進化しているんだけど、その当時からバンドも変わっていないし、自分のスタイルも変わっていない。だからベースは同じなんだよ。確かにここ数年で大きく環境が変わった部分もあるけれど、今もずっと同じ家に住んでいるし、友だちも変わってない。それが自分を変えないでいる要素だと思うよ」
確かに、国際フォーラムでのライヴとDVDで見られるライヴでは、基本的な構成は同じだ。大きなホールになったからって、ハデな演出をしているわけでもない。それどころか彼は座ってピアノを弾いている時間が長いのでシンプルだ。地味だ。つまり歌だけで充分に勝負できる。特にR&B/HIPHOP的アプローチだったファーストに比べて、よりオーガニックに、よりソウルフルになったセカンドアルバムのツアーでは、歌の気持ちよさが際だっている。涙すら、にじむのだ。
「みんなは『Get Lifted』と同じような作品を望んでいたかもしれないけど、セカンドは、より幅広く、大人っぽいものになったと思う。でも計画的にそうしたわけではなく、もっといいソングライティング、いいヴォーカル、いいプロダクションを、と思って曲を作っていただけで、たまたま自分がそういうモードだっただけだよ」
『Once Again』の12曲目「Coming Home」の解説にこうある。“今から20年とか経ってから、みんなにクラシックな曲と思ってもらえると本望だね”。確かに、ジョン・レジェンドにはこれから何十年もがんばって欲しいし、20年後でも優れたソウルミュージックを歌っていることだろう。スティーヴィー・ワンダーのように。そうなってくれないと困る! 素晴らしい出来栄えの2作品を聴いていると、そんな未来を確信しつつも、逆にその完成度の高さに、このモチベーションを何十年も先まで保っていられるかどうか、不安にさせられてしまうのだ。
「完璧なものを作ったとは全然思ってなくて、より良い曲を作っていきたい。まだまだ自分は成長できる余地があると思っているし、まだまだ進化していけると思っているよ」
とりあえず、ほっとひと安心だ。DVDを観ながら、次の来日まで首を長くして待っているとしよう。
Text:Tomohiro Okusa