どうでもよくてくだらない発明や物事に与える賞、ってのはイグノーベル賞はじめ結構あるものだが、この「ダーウィン・アワード」ってのも相当アホだ。「進化に不適合な遺伝子を減らした功績」により、バカげた死に方をした人に授与されるってんだけど、コレ、なんでも実在してるようでして(http://www.darwinawards.com/ )。
まあ別に賞金や賞品なんてものもなく、実話じゃなく都市伝説でもOKというひどくユルい賞なのだが(笑)、その「バカげた死に方」の解明に真剣にのめりこんでしまった男がいたらどうなるか…というコメディが本作。まぁかなりの奇想といえばいえるが、「ダーウィン・アワード」そのものはネタ程度の扱いでしかなく、話はどんどん違う方向に進んでいくから、何を描こうとしているのかてんで読めない。でも最後はどこかクラシカルなムードの中に落ち着くという、なかなか困った作品なのだ。
主人公はLA市警プロファイラーのマイケル(ジョゼフ・ファインズ)。やたら頭は切れる(らしい)ものの、思い込みが強すぎるわ、血を見りゃ失神するわ、けっきょく連続殺人犯を取り逃がしてあっさりクビに。で、「ダーウィン・アワード事例に共通する因子を読み解き、あなたの会社に毎年多大な損失を与えている案件を解明します」と、趣味と実益を兼ねて売り込みをかけたのが保険会社。女性調査員のシリ(ウィノナ・ライダー)と組まされて、ダーウィン・アワード的案件の調査旅行に出るが……。
っていつの間にかロード・ムーヴィ的になっちゃうワケだが(笑)ここで面白いのがマイケルにずーっとくっついてるドキュメンタリ・キャメラ(といっても卒業制作のためのアマチュア映画なのだが)の存在。そのヴィデオ映像が入れ子状にたびたび挟まるのだけど、「客観に徹するべし」というドキュメンタリの鉄則を遵守するあまり、マイケルらをどんな災難が襲おうとも一切関知しないでただ撮ってるだけ、ってのが笑える。
このキャメラ自体がツッコミでありボケでもあり、幾層にもなった物語をさらに異化するために存在しているかのよう。それは極めて現代的な構造なのだが、監督は妄想一直線のマイケルと、彼に終始ツッコミまくるサラとの女性上位カップルに、'30〜'40年代スクリューボール・コメディへの憧れを託してもいるようなのだ。それには、どうみたって美男美女で、でもどうみたってタガの外れた変人キャラであるジョゼフ&ウィノナのコンビはいかにも相応しいわけ。
やっぱりヘンだ。何考えてんだかよく判らないけど面白い。この組みあわせで続編希望。
Text:Milkman Saito