LAKAI LIMITED FOOTWEAR『FULLY FLARED』〈LAKAI LIMITED FOOTWEAR〉が遂にフルレングスフィルム『FULLY FLARED』を発売。
07 11/21 UP

冒頭いきなり、妊娠検査薬を囲んでトイレで話しこむウェイトレス三人。彼女たちはアメリカ南部の田舎町にあるパイ専門ダイナーに勤めているんだけど、みんな今の自分に不満がいっぱい。どうやら思わしくない結果が出たらしいジェンナと交す、生々しいけどウィットの利いた台詞がだからこそオカシい。でも現実味のない、どこか舞台劇のようなフラットなテンポが実に不思議だ。

このちょっとだけ日常を異化してみせる効果が全編で冴えまくるのが本作。とにかく登場人物との距離感が絶妙で笑えるのである。

主人公のジェンナ(TVドラマ『フェリシティの青春』のケリー・ラッセル)はパイ作りの名人。でも実生活は異様に時代錯誤的で嫉妬深い夫に縛られて、他人と親しく付き合うことまで禁止され、隣町のパイ・コンテストにも参加できない始末。彼女はそんな夫から逃げ出そうとこっそり貯金までしているのだが……それが冒頭の“不幸な結果”で御破算に。

当然ジェンナの憤懣は夫だけでなく、お腹のなかの子にも向けられる。しかしその胎児の結んだ縁か、主治医になったハンサムな産婦人科医と肉体関係まで結んじゃったりして(笑)。

そんなふうにますますドツボに嵌まっていく彼女だが、絶望するたびに天才的新作レシピを思いつくのだ。「惨めな妊娠と自己憐愍」「不倫で亭主に殺される」「赤ん坊が私の人生を台無しにする」なんてヘンな名前の新作パイの数々は、実際に画面で紹介されるので甘党はたまらんだろう(ただし僕は辛党なので完全に拷問だ)。

こんな洒落た映画を撮ったエイドリアン・シェリーは、彼氏ができなくて悩む(でもストーカー男につきまとわれる)同僚ウェイトレスとして出演もしているが、かつてハル・ハートリーの『トラスト・ミー』に主演もしたNY派のアイコン的女優だ。しかし本作全米公開前の昨11月に殺害され、全米に衝撃が走ったのも記憶に新しい。ましてやこの映画を観れば誰もが感じるだろう。こんな才能の喪失は惜しすぎる!



『ウェイトレス〜おいしい人生のつくりかた』
監督・脚本:エイドリアン・シェリー
製作:マイケル・ロイフ
出演:ケリー・ラッセル、ネイサン・フィリオン、シェリル・ハインズ、 ジェレミー・シスト、アンディ・グリフィス、エイドリアン・シェリー
2007年/アメリカ
原題:WAITRESS
上映時間:108分
配給:20世紀フォックス映画

http://movies.foxjapan.com/waitress/

11月17日(土)より、シャンテ シネほか全国順次ロードショー

©2007 TWENTIETH CENTURY FOX

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