07 11/19 UP
いきなりソウル・バスとフアン・ガッティをミックスしたような、タイポグラフィのタイトルデザインが画面いっぱいに展開する(ピクチャー・ミルによる)。これが実にカッコいい! こういうシンプルで硬質なデザインを好む監督というのは、だいたい本編の内容もそういうテイストに仕上がるものだ。
案の定このスリラー、徹底してタイト。実に無駄なく緊迫感の途切れない85分の小気味よいスリラーとなっている。
音楽もかけずに夜の道を走る車上の夫婦(ルーク・ウィルソン&ケイト・ベッキンセール)。かなり険悪な空気の会話から伺えるのはどうやら離婚間近であること、その原因は幼い息子を亡くしたことにあるらしいこと……。
しかし田舎道に逸れた時点で、車がエンストしてしまう。仕方なく一夜を明かそうと泊まったボロいモーテル。さらに気まずい空気が増幅するなか、備え付けのヴィデオを何の気なしに見てみると……それは誰かが惨殺される様子を克明に写したものだった。趣味の悪いホラー?……いや、その舞台は紛れもなく“この部屋”だ! 果たして部屋じゅうのあちこちにヴィデオキャメラが隠されていた!
ここからは、客を餌食にスナッフ・ヴィデオを製作しているモーテルオーナーのクルーたちと険悪夫婦の攻防戦が繰り広げられるわけだが、前半は密室劇的、後半はダンジョン逃走劇へと展開。攻守の反転も含め、ストレートなスリラーをとことん面白くさせる方法を熟知している感あり。このハンガリー人監督ニームロッド・アンタル、今後が楽しみ!
Text:Milkman Saito