07 11/16 UP
シリーズ映画でこれほどまでに開き直った最終篇というのも珍しい。だいたいそれまでのストーリーを収束することに重きが置かれがちなものだろうが、本作にはそんな拘泥など大団円までほとんど伺えないのだ。もちろん、ここまでシリーズにつきあってきた観客は、なぜジェイソン・ボーン(マット・デイモン)がなぜ記憶を失ったのか、どうして凄腕暗殺者に変えられたのかが知りたいわけだけど、徐々に解き明かされていく謎さえも次の凄絶なアクションへの起爆剤…いってしまえば繋ぎでしかないようにさえ思えてくる。まさにこれは稀にみる“純粋アクション映画”になっているのだ。
ポール・グリーングラスは『ブラディ・サンデー』や『ユナイテッド93』で手持ちDVによるドキュメンタリ的なアプローチがトレードマークとなったが、「ボーン」シリーズ第2作『ボーン・スプレマシー』でもその方法論に則った作劇を進めてきた。ただ、前作ではあまりにカッティングが素早すぎて(おまけにわざと手ブレさせてるもので)何が起こっているのか判読できないことも度々だったのだが(笑)、本作では見事にそのようなことはない。まったく無駄のないハードで凄絶なアクションが、全世界を股にかけて連続するのにはただただ圧巻。とりわけ高低の落差と横移動を延々と繰り広げるランドスケープを最大限に活かしたタンジールのチェイス・シーンは素晴らしい!
Text:Milkman Saito