“グラインド”とはつまり、ストリッパーが扇情的に腰を突き出し、ぐりぐり回す動きのことだ。'60〜'70年代のアメリカで、ハダカやセックスや暴力や血みどろや怪物宇宙人ゾンビetc...を扱ったエクスプロイテーション・ムーヴィ(つまりキワモノ映画)が2本立て3本立て上映されていたのは、多くが古いストリップ小屋を改装したような映画館だった。やってる映画の質と照らし合わせてもぴったり、だからそうした劇場を「グラインドハウス」と呼んだワケ。
興味本位にして商業至上主義、俗悪にしてインモラル。しかし大手スタジオの規格に外れたワイルドな魅力に溢れる低予算映画を、ガキの頃から実際にグラインドハウスで観てハマりまくってたのがタランティーノだ。ひと世代、とまではいかぬまでも、いささか齡が違うからおそらく実地体験はないだろうが、同じ魂を持ったテクス・メクスの盟友ロドリゲスを誘い、現代版低俗映画2本立てを目論んだのが本作『グラインドハウス』である。アメリカではそのかたちで公開されたけど(日本でも限定上映!)、いわばディレクターズ・カット版で二分割公開となるのがこれだ。
んでタランティーノのパートが『デス・プルーフ in グラインドハウス』。スタント仕様の改造車で女を轢き殺しては快楽を得る、元スタントマンの変態殺人鬼映画!と云ってしまっちゃそうなんだけど、いかにもタランティーノらしい、もうひたすらダラダラしたガーリーな日常会話を聴かせてしまう力量はさすが。あからさまにエロエロなアングルが炸裂しまくりもするわけで、そういう意味でグラインドハウス・シネマっぽい、女の子映画としても見れるのだが……後半は70年代カーアクション映画のメルクマール『バニシング・ポイント』と、セックス映画の巨匠ラス・メイヤーの『ファスター・プッシーキャット、キル!キル!』に捧げる大爆笑アクションに!
そこで大活躍するのがゾーイ・ベル。『キル・ビル』でもスタンド・インを演じてたという全米No.1女性スタントウーマンが、本名のままに演じる危険大好き女なのだ。いわば「過去のマッチョな栄光にすがるインポテンツ男(カート・ラッセル最高!)」vs「現役バリバリ、快楽至上主義のマッチョくそくらえ女」のガチンコ対決に転じるってのが爽快。これぞ真のガーリー映画だっ!!とモロ手を上げて称賛してさしあげましょう。
かたやロドリゲスのパートは『プラネット・テラー in グラインドハウス』。謎の生物兵器が街じゅうに漏れ、それに罹患した人々は全身腫瘍のゾンビ人間に! 立ち向かうはやたら腕っぷしの強いおたずね者、美味いソースのレシピしか頭にないバーベキュー屋のおっさん、ガーターベルトに麻酔の注射器を差した女医、そしてローズ・マッゴーワン(もとマリリン・マンソンのフィアンセ)が大復活の快演を見せる、片脚マシンガンのゴーゴー・ダンサー!!
基本はB級映画の巨匠ジョン・カーペンター映画のノリなのだが、そのスピード感とアホらしさ(+血ノリの量とグロさもね)は10倍は濃ゆい。タランティーノもレイプマニアのゾンビ軍人をキ○タ○蕩かしながら怪演し、盟友の作品に華(?)を添える。
いずれにしろ、元ネタ知ってないと面白くないようなヤワな作品じゃありません。使い古しまくったフィルムを模した音&コマ飛びの嵐の中、なにより映画のパワーを信じきったヤツらの、愛の深さにブチのめされろっ!
Text:Milkman Saito