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とにかくセックス、ひたすらセックス。吹き替えも誤魔化しもなく、冒頭からもう、男に女、ゲイにヘテロの出演者が本当にヤりまくる。……つってもニッポンだからボカシかかりまくってるんだけど(なんと100カ所以上だとか!)、そんな時代遅れの規制がどうしようもなく犯罪的でつまらないことだってのは観ているうちに誰もが感じるだろう。
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』で一躍名を上げたジョン・キャメロン・ミッチェルが今回描くのは9.11以後のニューヨーカーの姿。一度もイッたことのない女性恋愛カウンセラー、身体と心の齟齬が拡がるゲイ・カップル、SMの女王様を辞めたいレズの芸術家……不安に怯え、性と生に悩む彼らがやがて辿りつくのが「ショートバス」なる社交サロンだ。そこには“透過性であるニューヨーカー”にエイズが広まったのを悔やむNYの元市長(隠れゲイ)なども集ってきて、まるで'60年代フリー・セックス謳歌期のように、夜な夜な乱交パーティが行われている。どことなく初期ハードコア・ポルノの名作『グリーンドア』を思わせる、ピースフルで祝祭的なムードのうち(もちろんマジでヤってるエキストラ、エンド・クレジットでは“SEXTRA”と出ます)、人間同士が真にコミュニケイトする方法としてセックスはまだ有効だ、という監督のメッセージがびんびん伝わってくる。
確かに表現は直截的。でも、あまりの率直さ真摯さゆえにオカシくて哀しくて、やがて浄化へと導かれる驚くべき快作。あるいは'70年代以後“進化”してきた「個」の意識に逆行するようなセックス観に反発する人もいるかも知れぬが、いいじゃないか、セックスの幸福感なくしてこの世界の何がはじまるというのだ?!?
Text:Milkman Saito