消えた天使 ハリウッド流のサイコ・サスペンスの流儀に倣いながらも、エキセントリックで暗い、きわめてチャレンジングな作品。
07 8/6 UP

『インファナル・アフェア』のリメイク版『ディパーテッド』がアカデミー賞を席捲し、一躍名を売った香港の奇才、アンドリュー・ラウ。彼のアメリカ映画進出第一弾である。まあ、そのこと自体は香港映画界にとって別に目新しいことではないが、正直成功したのはジョン・ウーくらい。あとはシステムに取り込まれて、せいぜい安っぽいジャン=クロード・ヴァン・ダム映画の雇われ監督になるのがオチ、ってところなのも事実だ。

だがラウは違う。自分でプロデュースも兼任し(共同製作は、ヴァン・ダム映画としては近年ぶっちぎりの傑作である『レクイエム』のフィリップ・マルチネス!)、ハリウッド流のサイコ・サスペンスの流儀に倣いながらも、エキセントリックで暗い、きわめてチャレンジングな作品で勝負して出た。

公共安全局員のリチャード・ギアは長年の職務経験が禍し、心に覆いがたい闇を抱えている。性犯罪者リスト登録者をしつこく監視し、さしたる理由もなく暴力を振るったりして危ういことこの上なし。そんな男が、退職後の後任として赴任してきたクレア・デインズとともに少女失踪事件を追跡するのだが、これまた容赦のない事件なのだ。ラウの演出も香港で撮るときよりサディスティックな描写に歯止めがなくなってるのが驚きで、まずこのままではアメリカで公開できないんじゃないか(事実、日本先行である)。

昔のラウ映画を思わせるちょっと凝りすぎな映像効果と細かいショットが神経を苛立たせるが、ラストへの畳みこみなど、これが『インファナル・アフェアIII/終極無間』でやりたかったことなのかな、とさえ思わせる展開さえ見せる。もうひとつの驚きは、これで映画進出を決めたアヴリル・ラヴィーン。熟慮しての選択なのか、なーんも考えてなかったのか、それとも香港映画のファンなのか(笑)、ちょっとびっくりします。

『消えた天使』

監督・製作:アンドリュー・ラウ
出演:リチャード・ギア、クレア・デインズ、アヴリル・ラヴィーン、ケイディー・ストリックランド、レイ・ワイズ、ラッセル・サムズほか
2007年/アメリカ
上映時間:1時間45分・R-15
配給:ムービーアイ

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