アドレナリン クールな色彩と美術そして構図をきっちり計算していて、無意味に過剰じゃなく好感度高し。
07 7/5 UP

『MIND GAME』『鉄コン筋クリート』等で日本を代表するアニメーション・スタジオとなったスタジオ4℃。その卓越したテクニックと、幅の広さをアピールするかのように、アニメ界を中心とする7人の才能を結集して作り上げたのがこのオムニバスだ。

これがまたそろって出来がいい。表現として最先端をいく典型的メディアらしく、商業映画でありながら実験的であったり物語性が稀薄だったりすることをまったく怖れていないのもいい。

中でもやはり最高なのは初期・中期『クレヨンしんちゃん』の作画・絵コンテや、『MIND GAME』の監督で知られる湯浅政明作品「夢みるキカイ」。機械仕掛けの部屋にひとりでいる赤ん坊が、どことも知れぬ惑星の荒野へ吐きだされ、旅をして不思議な生物と出会い……というシュルレアリスティックな幻想譚。ルネ・ラルーの『ファンタスティック・プラネット』やユーリ・ノルシュテインの『話の話』を想起させもする叙情的で、しかし乾いたイメージの連鎖が素晴らしい。近似性のある世界観で、より祝祭的な福島敦子のオープニング・アニメも素敵。

また唯一の3D-CG作品、『鉄コン筋クリート』の美術監督・木村真二は、持ち前の異様に緻密で雑然とした世界観で圧倒させる。その名も「デスティック・フォー」……死後の世界の悪ガキ版“ファンタスティック・フォー”だ。グロいがカワイイ、んでワケ判らん(笑)。こんな3D見たことないぐらいに狂っている。脚本には高須光聖が加わり、何語でもない台詞の声はぐっさんやカラテカ矢部だ。

他にも、上海の子供の世界とスペースオペラが合体する河森正治(「マクロス」)の「上海大竜」や、晦渋なグノーシス主義的モノローグと錬金術イメージがドラッギーに展開する二村秀樹「LIMIT CYCLE」。恋人関係でさえない幼なじみの高校生男女の、たった一日の些細な冒険をリアリズムで描いた渡辺信一郎(「カウボーイビバップ」)の「BABY BLUE」……と、それぞれの作風の差異がこれでもかとばかりに明確。だから飽きずに楽しめる。なかなかいい企画だなぁ。

『Genius Party』

監督:福島敦子、河森正治、木村真二、福山庸治、二村秀樹、湯浅政明、渡辺信一郎
出演:柳楽優弥、菊池凜子、山口智充、矢部太郎、栩原楽人、小倉久寛、三上博史ほか
アニメーション制作:STUDIO4℃
2007年/日本
上映時間:1時間44分
製作:Genius Party製作委員会
配給:日活
支援:文化庁

http://www.genius-party.jp/

7月7日(土)より全国ロードショー

©Genius Party
©MovieWalker

www.honeyee.com

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