ジェイスン・ステイサムはエラい。気がつきゃ彼の映画ってハズレなし。どんな役を演ろうが付きまとうザラついた雰囲気はいかにも英国労働者階級らしく、愛想笑いを拒否するような仏頂面もハードな感触ではあるが、不意にそれがハニカミを見せたりすると妙に愛嬌あって憎めない。あのどうしようもなく退屈なリュック・ベッソン印アクション映画群でも『トランスポーター』シリーズだけは僕のお気に入りだ。とにかく荒唐無稽がサマになってる。“そこにある物”を利用するクンフー的アイディアの活用も巧い。
で、この『アドレナリン』も素晴らしく直線的で、ためらいがなく面白い。『D.O.A.』(これも『都会の牙』のリメイクだが)という映画があったけれど、「ヤバい薬を打たれ数時間で命がなくなる→自分でその解毒剤と犯人を探しまくる」って筋立てなのだが、ここで面白いのがその薬の設定。体内アドレナリンが一定以下になると死んじゃうってものなので、とにかくステイサムはハイになりたくもないのに昂奮しまくり、自分から危険なハメに晒されまくり、やっちゃいけないことをムチャクチャやりまくるのだ!
とりあえず走る。ぶっ壊す。ケンカする。ショッピングモールに車で突っ込む。次第にこれがハリウッド・ブロックバスターのパロディなのに誰でも気づく。そんなの関係なく驀進する。カーステで好きでもないヘビメタかけてヘッドバンギングしまくる。アドレナリンを強制分泌させる薬を教えられて病院に行く。流石に処方は無理だから、成分が微量に含まれてる鼻炎薬を患者蹴倒して盗み、チェーン吸引する。中華街の真ん中で彼女と会う。ヤクが切れかける。仕方ねぇや、衆人注視の中でヤっちゃうっ!!!!!!
見事なバカにして理に適ったバカ。ネヴェルダイン/テイラーなる未知の監督コンビも、おそらくステディカム装備のうえローラースケートで滑走するようなスピーディなキャメラワークでキメまくりつつ、クールな色彩と美術そして構図をきっちり計算していて、無意味に過剰じゃなく好感度高し。こういうのを拾い物というのだ。
Text:Milkman Saito