そのまま一幕ものの舞台劇にできるような映画だ。登場人物といえば、自殺したC級アイドル如月ミキのファンサイト常連男5人のみ。舞台は都内のペントハウス……というかショボい小部屋に限定。そこでの一周忌追悼集会ではじめて顔を合わせた彼らが、果たして愛するアイドルの死が“自殺”だったのかどうなのか、互いを疑いつつされつつ、糾弾しつつされつつ、秘密を暴きつつ暴かれつつ、次第に「真相」らしきものに近づいていくという構成である(どうも同日公開の『ゾディアック』『ハリウッドランド』に似たものがあるな)。
ミステリ映画につきものの、推理や証言に基づく再現/回想シーンはあるものの、ほぼ上映時間と合致した展開で進行するガチンコの台詞劇。およそ非映画的なつくりをわざわざ選んだかのようなものだけど、こういう体裁のものにありがちな退屈さはなく……というか、このテの映画にうんざりしている僕は最初のうちこそ斜めに観ていたが(笑)、15分も経たぬうちにぐいぐい引き込む佐藤祐市(『シムソンズ』って佳作があったな)の手腕は大したものだ。
それはもちろん古沢良太の脚本の巧みさもある。でも成功の最も大きな要因は、なんといっても絶妙のアンサンブル・キャスト。小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、ドランクドラゴン塚地、香川照之という、映画TVを股にかけるクセ者たちが、まったくもって自分のイメージ・キャラと微妙に異なる役どころを、決して鈍重に堕ちず、軽妙に演じきっているのだ。オタクのサイトに集まった者たちは結局オタクじゃなかったりもするのだけれど(笑)、アイドルに捧げる情熱はまったくオタクと同質のもので、それを徹頭徹尾肯定する明るさもいい。
というわけで、ささやかな上出来のミステリとして終われるはずなのに……最後の最後に「それを今さら出すか!」というシーンがあってびっくりする。やはりオタクはオタクであったことをダメ押しするようなこのシーンあればこそ、本作を“いい話”で収めず、C級なればこその哀しみを掴みとろうとする作者のたくらみがあるのだ。……ま、そのあとにまだオチがあって、コレは単に蛇足なんだけどね(笑)。
Text:Milkman Saito