ハリウッドランド 奇妙な三角関係を通してハリウッドの光と闇を浮き彫りにしようとする試みは、充分に蠱惑的だ。
07 6/19 UP

1959年6月 16日。アメリカン・イコン「スーパーマン」を、TVシリーズではじめて演じた俳優ジョージ・リーヴスがよりにもよって“自殺”してしまった。本作はそのスキャンダルをめぐるハリウッド裏面史である。

このタイトルで直感的に思い浮かぶのは、リー山のサインボードがまだ“HOLLYWOODLAND”だった時代のこと。その13番目の「D」の文字は夢破れた女優の卵が投身自殺する名所であったという。つまり華やかさの裏の暗黒。夢を抱いた者たちの終焉の地。

夢の終焉とは、「映画」が絶対的な娯楽の王者であった時代の終焉ということでもあり、それは事件の直後、「スーパーマンの死」を頑なに信じようとしない子供たちの姿に如実に現れているだろう。彼らにとっては毎週、ウチに居ながらにして(ということは日常と地続きなのだ)冒険心を満足させてくれるスーパーマンこそが夢と正義の象徴として唯一リアルな存在だったのだ。

そんなリーヴスは当然、街では人だかりのできる人気者。しかし映画人たちからはあからさまにランク違いと見られ、はっきり言えば馬鹿にされていた。そんな過渡期ならではの苦悩と屈折を背負った男を、人間的魅力たっぷりに演じるベン・アフレックがいい。

ただし映画は、事件を調査し推理する私立探偵(エイドリアン・ブロディ)が狂言回し役であるように彼の苦悩のみを核に据えたものではない。リーヴス、その愛人となる人妻(ダイアン・レイン)、そして彼女へ歪な愛を捧げるフィクサー(ボブ・ホスキンス)の奇妙な三角関係……これを通してハリウッドの光と闇を浮き彫りにしようとする試みは、「真相」の多面性とハードボイルドな語り口、レトロな画面設計も相俟って充分に蠱惑的だ。

ところでこの映画、東京での公開日はリーヴスの命日だそうで…(笑)。

『ハリウッドランド』

監督:アレン・コールター
出演:エイドリアン・ブロディ、ベン・アフレック、ダイアン・レイン、ボブ・ホスキンスほか
2006年/アメリカ
上映時間:2時間6分
配給:ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)

http://www.movies.co.jp/hollywoodland/

シャンテシネほか全国順次ロードショー中

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