ロマンティック・コメディは“ボーイ・ミーツ・ガール”こそ命である、といってもいい。かつてハリウッド黄金期のコメディライターは、いかに粋で意外性たっぷりな男と女の出会いをヒネりだすかに精根傾け、俳優たちは時に非現実的で突拍子もないそれをいかにスマートに演じてのけるかに勝負を賭けた。……そんなの忘れてしまったかのような映画が最近多いのだけれど(とりわけ日本や韓国はヒドい…)、さすが今のラブコメ二大巨頭ともいうべきドリュー・バリモアとヒュー・グラント。ふたりが顔を合わせた瞬間にミラクルが起きる。
ヒューは80年代に一時代を築いたポップスター(開巻いきなりの「ワム!」そっくりMTVは爆笑)。今は同窓会やら遊園地やらでの営業が主な仕事だが、それも案外悪びれずに割りきって楽しんでる様子。でも時代はめぐり、「はじめて買ったレコードがあなたでした」なんてコがスターダムにいたりもするわけで、そんな現・売れっ子から新曲の依頼が舞い込んだ。
で、自宅兼仕事場で曲づくりしてると、植木の水やり係の代役としてちょっとイカれたネエちゃんがやってくる。もちろんドリュー。顔を会わせるなりいきなりふたりのマシンガントークがはじまるのだが、丁々発止と交しあうパンチの効いた台詞の応酬にもううっとり、キャメラもそれを小細工せずにしっかり捉える。そこで乗れればあとは至福の時間をひたすら楽しむだけだ。
ド素人のドリューに詞作の才能を発見したヒューは、ふたりで新曲を作り上げていくのだが、その後の展開は言わずもがな。デリケートな感情の移り変わりを、軽やかさとスピードを維持したまま、するすると表現していくふたりの運動神経に惚れぼれ。ヒューはピアノ弾き語りも披露、歌声もきっちり甘いのは流石だけど、やっぱり最もほんわかするのはデュエット・シーンでのドリュー。彼女の人の良さが透けて見えるような素直な歌にもうトロトロですよ(笑)。
Text:Milkman Saito