ホリデイ ロマンティック・コメディが映画の粋を支え続けてきた偉大な先人たちへのオマージュなのである。
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LAの映画予告編制作者キャメロン・ディアスと、ロンドンのOLケイト・ウィンズレットが、ホームエクスチェンジして互いに見つける新しい愛と生活。久々に100%二枚目を演じるジュード・ロウとキャメロン、珍しくソフトでナイーヴな一面を見せるジャック・ブラックとケイト、という組みあわせの妙もあって、きわめて上質のロマンティック・コメディに仕上がっている。

しかし本作の陰の主役は、キャメロン邸の近くに住む老脚本家(イーライ・ウォラック)なのだ。ステイしているケイトが、ハリウッド全盛時の名優ケイリー・グラントと同じ英国サリー州出身だというので親しくなり、ロンドンでの恋に傷ついた彼女に“観るべき映画”のリストを手渡す。それをケイトはビデオ・ショップで借りて次々と観ていくのだけれど、どうやら1930〜40年代傑作コメディのエッセンスとおぼしきものなのだな。

おかしなボーイ・ミーツ・ガールの最高例と現在でも称賛されるエルンスト・ルビッチの『青髭八人目の妻』('39)。映画史上最も台詞の語数が多いとされる超特急コメディ、ハワード・ホークスの『ヒズ・ガール・フライデー』('40)。才気煥発、天才コメディ作家プレストン・スタージェスの『レディ・イヴ』('41)……すべて、いわゆるスクリューボール・コメディ。主役格はみんな美男美女、でもそろって異性関係がしっくりいかず、それも当然なくらいイカレたキャラクターばかり。極端な女性上位映画であるのも大きな特徴だが、そんな狂騒的な作品群を観まくるうちケイトは執着していた恋の不毛さに気づき、新たな次への一歩へと踏みだすのである。

いわば理論編がケイト部分、実践編がキャメロン部分といえばいいか。つまり映画全体でいわんとしているのは「スクリューボール・コメディは現代女性の意識も変える!」ということ! ロマンティック・コメディが映画の粋を支え続けてきた偉大な先人たちへのオマージュなのである。ハリウッドが明らかに落日を迎えている今、こうした作品の登場はなんだか嬉しい。

『ホリデイ』

監督・製作・脚本:ナンシー・メイヤーズ
出演:キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット、ジュード・ロウ、ジャック・ブラックほか
2006年/アメリカ
上映時間:2時間15分
配給:UIP

全国ロードショー中

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