『ユメ十夜』 それぞれの作家たちの「戦略」がモロに伺える、なかなか興味深い作品。
07 2/16 UP

夏目漱石の作品中でも相当の異色作「夢十夜」。夢ならではの不条理を昼の論理で解釈せず、そのまま書き記したかのような不気味な掌編集である。黒澤明もこれにインスパイアされて自分の夢を映画にしたが、本作は漱石の残した十篇を大ベテラン、もしくは新進気鋭という両極端な監督十人が一編ずつ映像化。それぞれの作家たちのアプローチの違い……というか、いかに独自性を出そうか、目立とうかという「戦略」がモロに伺えてなかなか興味深い。

原作に比較的まっとうに取り組んだ市川崑や清水崇も悪くはない。でもやはり面白いのはブッ飛んだ解釈で臨んだ実相寺昭雄(合掌…)や豊島圭介、清水厚。そしてよくぞやってくれたぜ、山口雄大、山下敦弘、松尾スズキ! どうせ夢だから好き勝手に解釈してやれとばかりの、原作から何光年も離れたムチャクチャさに唖然茫然。当代随一のアホ映画作家山口(『魁!クロマティ高校』)は安田大サーカスのみならず本上まなみまでブタにして『フォービデン・ゾーン』風豚丼アクションへと改変。いまや映画作れば大傑作の山下(『リンダ リンダ リンダ』)はほとんど原作と無関係な農村巨大生物モノに。そして松尾は2ちゃんねる言語とヒップホップダンスが爆裂する『七人の侍』的ハイテンション時代劇に。虚を衝くにもホドがあるオチには開いた口がふさがらない!

『ユメ十夜』
監督:実相寺昭雄 、市川崑 、清水崇 、清水厚 、豊島圭介 、松尾スズキ 、天野喜孝 、河原真明 、山下敦弘 、西川美和 、山口雄大
原作:夏目漱石
出演:小泉今日子、松尾スズキ、うじきつよし、服部圭亮、香椎由宇、山本耕史、市川実日子、阿部サダヲ、藤岡弘、山本浩司、緒川たまき、松山ケンイチ、本上まなみ、戸田絵梨香ほか
2007年/日本
上映時間:1時間50分
配給:日活

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