07 2/14 UP
今年の賞レースで大評判なのも当然! 近年稀にみるミュージカル映画の傑作といって間違いない。音楽業界の話だからステージ的なパフォーマンスも多いのだけれど、なんといっても素晴らしいのは、ののしりあいの口ゲンカをすべて歌で表現するシーン。感情のバトルが音楽の力で何倍にも増幅され、まさにシネミュージカルならではの興奮を味あわせてくれるのである。
'60〜'70年代の黒人音楽の変遷をしっかりと描いているのも、ポップ・カルチャーを真面目に考察する監督、ビル・コンドンらしいところではあるが……でもさコレ、あまりにもあからさまにモータウン・レコーズにまつわる実話なんだよね。女性トリオ「ドリームガールズ」はすなわち「ザ・シュープリームス」。ビヨンセはそのままダイアナ・ロスで、スターダムを駆け上がるにつれメイクもそっくりになり、ご当人のように目までだんだん離れていくように見えてくる(笑)。リード・ヴォーカルの座を奪われグループを追われるジェニファー・ハドスンの役にも、知る人ぞ知るフローレンス・バラードというモデルがいる。スタンドプレイを封印したエディ・マーフィがほぼシリアスに演じるスター・シンガーは、ジェイムズ・ブラウン+オーティス・レディングといったところか。
だから配役の向こうにモデルたちの姿を思い浮かべてしまうのは仕方ないことなんだけど、それさえ軽く凌駕し吹き飛ばしてしまうのが、新人ジェニファー・ハドスンの存在感!ソウルフルという言葉がぴったりの久しぶりに心が震えるはずだ。彼女にいいとこ全部持ってかれるビヨンセも、ただ一曲の圧倒的な絶唱で損して得取った感じ。
Text:Milkman Saito