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いかにも英国北部っぽい荒涼たる岬。その中をひとり往くのはテリー・ギリアムの傑作『未来世紀ブラジル』のジョナサン・プライスだ。冒頭から心を掴む、幻想的で神秘的でケレンたっぷりの映像に浸る間もなく、たった数カットでいきなり中断。……なんと奇才ケン・ラッセル監督作(未完成)の編集前映像であったとは!
これはその作品の題材となり、'70年代中盤のパンク黎明期に幻のごとく現れて消えた結合体双生児バンド「ザ・バンバン」をめぐるドキュメンタリなのである。
…と見えて実はコレ、嘘八百。ラッセル自身が証言者として出ているにも関わらず、彼の撮った映画ってのも、劇中ドキュメンタリストを雇って密着撮影したってシーンもすべて捏造なのである(“嘘のないリアルさ”を信条とする劇映画運動「ドグマ95」のアンソニー・ドッド・マントルをわざわざ撮影監督に起用しているだけあって、対象との距離感・質感が絶妙)。
なにしろ監督はテリー・ギリアムの中断作品「ドン・キホーテを殺した男」をめぐる虚実不確かなメイキング『ロスト・イン・ラ・マンチャ』のコンビ。脚本も「ドン・キホーテ〜」を書き、のちに怪作『ローズ・イン・タイドランド』でも組むことになるトニー・グリゾーニだ。だからフィクションとドキュメンタリの関係性、両者の境界線の危うさが本作のテーマでもあり、腰の紐帯で身体が繋がった結合体双生児もそのメタファーなのである。
とはいえ音楽は素晴らしくリアルで本物! パンクの初期衝動をがっしり掴んだ曲も上出来、美形兄弟のパフォーマンスもスター性抜群(モデルは明らかにセックス・ピストルズ。もちろん双生児はジョニー・ロットンとシド・ヴィシャスだ)。嘘と判ってたってファンになること確実!
Text:Milkman Saito