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「いかにもアメリカ的な悪趣味」にもいろいろあるが、あのジョンベネ事件以後もなお「幼女ミスコン」は続いてるようだ。出る子供より出す親のほうがずっと病んでると思うが、本作のフーヴァー家もまた然り。
ミス・アメリカ授賞の瞬間をビデオで何度もプレイバックして、そのときの表情を練習している妹(小太りメガネのアビゲイル・ブレスリン)。ニーチェの掛け軸の前で筋トレしてる「沈黙の行」まっ最中の兄(ポール・ダノ)。ガラガラの会場で自己流の成功論を講釈してる父(グレッグ・キニア)。ヘロイン癖で老人ホームを追いだされたがちっとも懲りてない祖父(アラン・アーキン)。恋破れ自殺を図った自称“全米一のプルースト学者”なゲイの伯父(スティーヴ・カレル)を引き取りに行く、一家の母(トニ・コレット)。……冒頭の点景だけでも、この一家がかなりの機能不全を起こしているのがよく判る。
ま、いまの世の中、家族なんて多かれ少なかれマトモじゃいられない。だから映画でも小説でも、血族意識にとらわれない疑似家族的共同体の物語が増えているが、本作はまさに血の繋がった家族の再生の物語ってのがユニークなところ。しかもよりによって娘を幼女ミスコン出場に送りだす、あまりにもアメリカ的俗悪の極みといえる一家のおはなしなのだ。会場に駆けつけるまでのおんぼろミニバス爆笑珍道中のうちに、この「再生」を描ききってしまうところが洒落ている。
監督ふたりは夫婦らしいが、混沌のディレクションが抜群。皮肉に満ちて意外性豊か、かつよどみのない脚本も巧い。芸達者なキャスティングも完璧。ワールドミュージックの要素を大胆にミックスしたマイケル・ダナの音楽はもはやグレイト!
Text:Milkman Saito