リトル・ミス・サンシャイン あまりにもアメリカ的俗悪の極み、といえる一家のおはなし。
07 1/12 UP

「いかにもアメリカ的な悪趣味」にもいろいろあるが、あのジョンベネ事件以後もなお「幼女ミスコン」は続いてるようだ。出る子供より出す親のほうがずっと病んでると思うが、本作のフーヴァー家もまた然り。

ミス・アメリカ授賞の瞬間をビデオで何度もプレイバックして、そのときの表情を練習している妹(小太りメガネのアビゲイル・ブレスリン)。ニーチェの掛け軸の前で筋トレしてる「沈黙の行」まっ最中の兄(ポール・ダノ)。ガラガラの会場で自己流の成功論を講釈してる父(グレッグ・キニア)。ヘロイン癖で老人ホームを追いだされたがちっとも懲りてない祖父(アラン・アーキン)。恋破れ自殺を図った自称“全米一のプルースト学者”なゲイの伯父(スティーヴ・カレル)を引き取りに行く、一家の母(トニ・コレット)。……冒頭の点景だけでも、この一家がかなりの機能不全を起こしているのがよく判る。

ま、いまの世の中、家族なんて多かれ少なかれマトモじゃいられない。だから映画でも小説でも、血族意識にとらわれない疑似家族的共同体の物語が増えているが、本作はまさに血の繋がった家族の再生の物語ってのがユニークなところ。しかもよりによって娘を幼女ミスコン出場に送りだす、あまりにもアメリカ的俗悪の極みといえる一家のおはなしなのだ。会場に駆けつけるまでのおんぼろミニバス爆笑珍道中のうちに、この「再生」を描ききってしまうところが洒落ている。

監督ふたりは夫婦らしいが、混沌のディレクションが抜群。皮肉に満ちて意外性豊か、かつよどみのない脚本も巧い。芸達者なキャスティングも完璧。ワールドミュージックの要素を大胆にミックスしたマイケル・ダナの音楽はもはやグレイト! 

『リトル・ミス・サンシャイン』
監督:ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス
脚本:マイケル・アーント
出演:グレッグ・キニア、トニ・コレット、スティーヴ・カレル、アラン・アーキン、ポール・ダノ、アビゲイル・ブレスリン、ブライアン・クランストン、マーク・タートルトーブ、ベス・グラントほか
2006年/アメリカ
上映時間:1時間41分
配給:20世紀フォックス映画

シネクイント/シネ・リーブル梅田ほかにて公開中

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