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オートクチュールから派生したプレタポルテ(※高級既製服)の世界は、時勢や消費者の好みによって常にトレンドが変化するという性質の上に成り立っているビジネスであり、そこにはある種の不文律が確実に存在している。
この点を踏まえてみると、キャロルクリスチャンポエルというデザイナーの立ち位置は、極めて異質であることが認識できる。マスターピースと呼ぶに相応しい厳選されたアイテムを、愚直なまでに研鑽を積み完成度を高めるという方法論を、設立当初から一貫して行っている。
また、彼の製品を一方的な主観だけで読むと、アヴァンギャルドな作風に写るケースも多々あるが、そこにはテーラーリングをベースとした確かな技術があり、リアリティとファンタジーを巧みに操作しながらに有機的に複合させている。
こちらのグローブ2点にも、その傾向は顕著に表れている。カンガルーレザーのグローブは、通常の鞣しの工程と異なるオブジェクトタンニングをすることで、硬く凹凸のある質感に仕上げている。ヴァージンウールで編まれた硬質のニットグローブは、リブを若干長めに作られていることが特色である。
コンセプトとロジックの糸が完璧なまでに結ばれることで成立するコレクションは、まさに唯一無二の個性を形成し、その進化は止まることなく、永続的に歩み続けていくことだろう。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato