今シーズン、有力セレクトショップでスマッシュヒットを飛ばしているのが、LAを拠点に活躍するNYのファッションブランド、バンド オブ アウトサイダーズの新作である。
数年前から日本で展開されていたが、その先鋭的な提案に、都内を中心にようやくマーケットが追いついてきた。ここ数年“トラッド”というキーワードに乗ったアイテムが無数に出回っているが、このブランドが頭一つ抜けた存在であることは、店舗での商品の売れ行きを見れば容易に認識できる。
代表アイテムであるB.D.シャツは、クラシカルなディテールと、着丈の短い斬新なシルエットが人気を集めている。デザイナーのスコット スターンバーグは、今話題のNYの新進気鋭のファッションデザイナーの大半が、一流ブランドやデザイナーの下でキャリアを積んでいることに対して、異色ともいえる経歴の持ち主。
ブランドを立ち上げる以前は、スパイク・ジョーンズ、スティーブン・スピルバーグ、ブラッド・ピットなどの著名人、コカコーラなどの大企業も顧客に持つPRエージェンシーCAA(Creative Artists Agency)のエージェントととして活躍。そこで培われた経験や人脈が、マニュアルとは違う服作りへのアプローチを可能にしていった。
従来のデザイナーとは異なるアイディアと、Made in U.S.A、Hand tailored in New Yorkにこだわったクオリティとが、見事に両立されている。特にスーツの縫製は、ブルックリンで100年以上の歴史を誇り、歴代大統領のテラーとしても知られるマーティン グリフィールドのスタジオに依頼。
それによって“伝統”という息吹をもがコレクションに吹き込まれている。ユーモアに溢れたセンスと、優れた品質を供給できる生産背景を武器に、今後も厳しいファッションマーケットを疾走し続けることだろう。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato