honeyee.com ｜Web Magazine「ハニカム」

国内屈指のDJにして、サウンドクリエイターとしても注目を集める井上薫aka.Chari Chariとプロデュサーとしても活躍の場を広げるポート・オブ・ノーツの小島大介の２人組ユニット、Aurora(オーロラ)がニューアルバムをリリース。『Fjord(フィヨルド)』と題されたこのアルバムは、井上と小島によるアコースティックな空気感を漂わすギター・インストゥルメンツで構成されたアンビエント・ミュージックが展開されていると、ひとまず表現できるだろう。
が、しかし。

たしかに極上のリラックス感が味わえるサウンドではある。が、聴き進むうちに、濃密で繊細な音の粒子を波紋のように広げながら、お互いの“呼吸”を感じあう２本のギターがつくり出す研ぎすまされたサウンドとデリケートなグルーヴが、エレクトロニカにも通じる“アドヴァンス”な感触をも併せ持つことに気づかされるだろう。

つまり、この作品に収録された“音楽”は、単にレイドバックな気分を煽るだけの巷にあふれる「ソレ系」とは、明らかに一線を画すというわけだ。
即興でプレイするなかで自然に生まれでてきた音のシークエンスを切り取って出来上がったというこのアルバムからは、井上と小島の“音楽”に対する鋭敏な感性と深い畏敬の念が伝わってくる、といえば大袈裟だろうか。

ここで繰り広げられる、“音楽”はナチュラルではあるが、決して“天然”ではないのだと思う。