06 12/19 UP
いうまでもなくクリント・イーストウッド「硫黄島二部作」の日本篇。現在・過去・大過去を交錯させ、構成に凝った『父親たちの星条旗』に対し驚くほどストレート、今どき真っすぐすぎるほどの戦争映画だ。しかも言葉はほぼ日本語で、これがアメリカの映画賞を着々と制覇しはじめているというのもいささか驚きである。
最初の段階では日本人監督に任せるはずだった本作をイーストウッド自身が監督することになったのは、総指揮官・栗林中将のユニークさに惹かれたからだという。鬼畜米英式の情報を鵜呑みにしていた日本軍のなかにあって、アメリカ留学の経験もあった栗林(そして五輪金メダリストのバロン西)は、両国人の相違点あるいは共通点を知りぬいていた。日本的美徳であった「玉砕」を否定し、最後まで生き残ることが兵士の本分と考えたからこそ、硫黄島の激戦は生まれたのではないかと。
とはいえ本作、作戦の詳細については思いきりそっけない。主人公はあくまで一介の若き兵士(二宮和也、好演!)なのだ。彼が栗林や西、あるいは反・栗林派の上官(中村獅童)とのあいだに挟まれながらも、地獄の戦場を生き残っていく、その姿にこそ監督の主眼はあるのだ。
Text:Milkman Saito