06 9/21 UP
映画とVシネをメイン・ステージに、毎年コンスタントに4、5本の勢いで映画を量産し続ける三池崇史。ま、本数撮る奴なら他にもいるかも知れないけれど、ほとんどメディア間の温度差を気にすることもなく、異様なまでのハイテンションと高いレヴェルを持続したままこのペースだから凄い。とりわけそのファンタスティックな暴力描写と恐怖描写はカルトな人気を呼んで、ひょっとすると今、海外からもっともリスペクトされることが多い日本人監督でもあるんじゃないか。
しかし『太陽の傷』は三池作品としては珍しく「社会派」的要素の濃い作品である。テーマがいわゆる「少年犯罪」なのだ。暴力行為を停めに入ったサラリーマンが逆恨みされ、愛する娘を少年に惨殺される。警察も世論も少年法の前に味方にはならず、やがて家庭崩壊。生きる気力を失った主人公だが、3年後、加害少年が仮出所したとの報せに再び怒りが目覚め……。
全体のトーンは極めて静謐。その中で激烈なエモーションをかき立てていくのが、映像と音のさまざまな仕掛けだ。主人公の心象に合わせて緻密に計算され変化していく、鮮烈かつ苛烈な色彩。これと、不安と強迫感を煽りまくるノイズの同期が物狂おしいまでにスリリング。社会的なダークゾーンに真正面から踏み込みつつ、倫理や理屈や諦観や悟りに逃げず、観るものをねじ伏せるラストは崇高なまでに美しい。
それになんたって、主人公はあの哀川翔なのだ! 平凡なサラリーマンを演じても哀川翔。怒りに燃える一匹狼を演じても哀川翔。そのどうしようもない「哀川翔」っぽさが、いい意味で本作を社会派の胡散臭さから隔絶している。それにしても三池崇史、どこまで進化するんだろう……ちなみに次作は『大魔神』のリメイクだ!(笑)
Text:Milkman Saito