一心同体ともいえる土地であったNYを離れ、ロンドンに移ったウディ・アレンの第
一作。……ってことがもちろん最重要ポイントではあるけれど、それにしてもスカー
レット・ヨハンソンなんだよなぁ(笑)。
このコばかりは必ず大物になる!と、子役時代の『のら猫の日記』('96)から勝手
にひとり応援団長を買って出ていた僕にしてみれば、よくぞここまで化けたもんだと
感慨ひとしお。自作のタイトル(邦題だが)『世界は女で回ってる』を地で行く男ウディ
のお眼鏡に叶い、『マッチポイント』では初登場シーンからして、ローレン・バコー
ルの銀幕デビュー時を思わせるほどの妖艶さで応えてみせる。しかも本作はウディと
しても、ここ数年続いた自己模倣ではなく、ぐっとサスペンス味を増したエンタテイ
ンメント…心機一転的なものに仕上がっているのだ。そこでヒロインに抜擢された意
味は大きい。
彼女が演じるのは、いつまでも芽は出ないものの、とにかく男心をソソるアメリカ
人女優。手練手管を使ってノシ上がろうとする貧乏アイルランド人(ジョナサン・リー
ス・メイヤーズ)との愛欲に、打算的というよりは意外と素直に溺れ、妊娠。しかし
男には上流階級に属する妻(エミリー・モーティマー)がいて、その結果命を脅かされ
ることになる。
LUSTとLOVEのどちらを選択するか。どーなのよ、ってまるでオダギリジョーのCMみ
たいだが(笑)、ウディはこう結論づける。けっきょくはみな、「運」という人智の及
ばぬ力に左右される存在に過ぎない。「運」の前に人間はみな平等なのである。本人
がモラルに囚われ悩もうが悩むまいが、「運」にしてみりゃまったく関係ないことなのだ。さすが修羅場をくぐり抜けてきた男だけある、説得力はあるが身も蓋もない結論(
笑)。これもまた間違いなく、鬼のようなウディ流セックス・コメディなのである。