文字通り「帰ってきたスーパーマン」なのである。これは1978年から4作続いたシ
リーズの正統的な続編。テーマ曲も、冒頭のタイトルデザインも、基本的にはまった
く一緒だ。故クリストファー・リーヴに替わり今回ヒーローを襲名したブランドン・
ラウスなる俳優も「こんな顔がよくも今のアメリカに…」と感心するほどの“スーパー
マン顔”。同じく旧シリーズでジーン・ハックマンが演じた仇敵レックス・ルーサー
には、本作の監督ブライアン・シンガーの『ユージュアル・サスペクツ』をブレイク
スルーとしたケヴィン・スペイシーが扮し、頭をツルツルに剃って悪ノリ大芝居を披
露している。
スーパーマンといえば、その恋人ロイス・レイン。なんと彼女は今回、幼い男の子
のシングル・マザーとして登場してオールド・ファンを愕然とさせるが、ここにも驚
きの仕掛けがあるのでぜひ楽しみにしていただきたい。
しかし本作が興味深いのは実はそんなところにあるのではない。すでに文化的イコ
ンと化した典型的アメリカン・ヒーローが“いま”再登場する意味あいを明確に示し
ているというのが面白いのだ。
それはつまり、“いま”が9.11後の世界であるということ。たとえば、スーパーマ
ンが宿敵との戦いの中で力尽き、宇宙空間から地球に落下してくる。その光景を静か
に佇んだまま、身動きもできずに見つめる市民の姿。……きっと誰もが、崩壊するツ
インタワーをただ見つめるしかなかったNY市民のイメージと重ね合わせてしまうこと
だろう。ここからラストへの展開は、今のアメリカ人が何を失ってしまったか、また
何を求めてやまないのかが伺える面白い展開になっていくのである。
それでも最後にひとことツッコんでおこう。「もぉスーパーマンたらぁ……やるこ
たぁやってたのね」(笑)。