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「Eri, Eri, Lema Sabachthani ?/エリ・エリ・レマ・サバクタニ ?」。「神よ、何故に我を見捨てたもうや」と訳されるこの言葉は、周知の通り、主なるイエスが十字架に張り付けられた時に発した最後の言葉である。この言葉を引用した厳粛なタイトルとは、裏腹に、劇中、これでもかとノイズミュージックが鳴り続ける。それも生半可なノイズではなく、これでもか、という爆音のノイズ。

浅野忠信と中原昌也が演じる〈世界的に著名なミュージシャン〉が発するノイズミュージックが、近未来に流行ってしまうレミング病という不治の病を治してしまうという、この作品の主役は、間違いなく“音”である。受け取る人にとっては、もしかしたら、不愉快な音、逃げ出したい音かもしれないノイズミュージックに関して、監督である青山真治はこう語る。

「聴く人にとって、受け取り方はいろいろあるから、ある意味、挑戦的かもしれないですよ。でも、僕はノイズといわれる音楽を聴くと、とにかく和むんです。気持ちよくなって、眠くなる。それは音楽監督の長嶌(寛幸)も同じで、安眠するには、これ系の音楽に限ると言っているほど。だから、できるだけ、白紙なって観てもらいたいし、聴いてもらいたいんですよね。心を白紙にすればするほど、絶対に気持ちよくなれる。確信しています」。

劇中後半、“音”が映像を凌駕してしまう錯覚に陥るほどの“音”の洪水。浅野と中原の作りだす“音”が溢れ出す。

そして、作る側も観る側も、映画というフィールドで、“音”によってトリップさせられた時、まさに“音”で世界が変わると謳う映画「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」の核心部分とシンクロできる瞬間が待ち受けている。

「撮影中も爆音でやっていましたね。それが、気持ちよくて。音と映画を融合される映画を作るという観点から見ると、僕にしては珍しく100%の手ごたえですよ」

もしかしたら、この映画、“音”が持つ可能性を最大限に引き出してくれた、はじめての映画なのかもしれない。

『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』
http://www.elieli.jp/top.htm
監督:青山真治
出演:浅野忠信、宮崎あおい、中原昌也、ほか

2005年/日本
1時間47分
配給:ファントムフィルム
1月28日(土)より、シネセゾン渋谷・テアトル新宿ほかにて公開。


青山真治氏

www.honeyee.com

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