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マスコミ批判をテーマにした映画というのは、いかにも嘘臭く居心地の悪いモラリズムに陥ってしまいがちなものだ。なぜか。本来、映画もイエローペーパーもワイドショウも、観客の“興味本位”な部分に訴えるメディアであるという点では大差ないからである。
しかし南米エクアドルから登場した新鋭監督セバスチャン・コルデロの『タブロイド』は、そんなテーマのもつウサン臭さをも蹴散らしてしまうほどの面白さだ。
連続幼児レイプ殺人の取材でエクアドルを訪れたTVマン兼リポーター、マノロは、凄絶な集団リンチの現場に出くわしてしまう。被害者ビニシオは聖書販売人の真面目な家庭人だが、誤って少年を轢き殺してしまったのだ。収監されたビニシオは「冤罪だからTVで訴えてくれ」とマノロに懇願、引き換えに殺人犯に関する情報提供を申し出る。なぜ彼がそんなネタを持っているのか不審には感じたものの、特ダネの誘惑にも逆らえないマノロは、やがてのっぴきならない事態へと追いつめられていく…。
ストーリーだけみればありがちな社会派サスペンスでありサイコ・スリラーなのだが、倒叙ミステリ的話術でぐいぐい引きつける手腕は大したもの。それ以上に、ビニシオが遭う集団リンチのラテン的な狂騒と混沌、エスカレートする熱狂の空気も、類いまれな映画的興奮があってたまらない。
ちなみにマノロは、マイアミに拠点を置くラテン・アメリカ向け放送局の一員である。この設定には、強引な捏造をもあえて犯すアメリカニズムへの皮肉も感じられるのだれど、監督の次回作はなんとハリウッド映画。それもハリソン・フォード主演なんだって。
Text:Milkman
Saito