オルタナティヴなダンス・ミュージック・シーンにおいて、近年、ノルウェイのアーティストが注目を集めている。その筆頭に挙げられるのはもちろん数々の世界的ヒットを持つロイクソップであるが、あなたが早耳を自称する友達にノルウェイと言えば……と尋ねたら、十中八九、リンドストローム&プリンス・トーマスという名前が真っ先に挙がるだろう。ニューヨークのDFAレーベルだけでも、LCDサウンド・システム、ユアン・マクリーンと、立て続けに2アーティストのリミックスを手掛け、それ以外にもイギリス、フランス、ドイツのスモール・レーベルのシングル・リミックスを今年だけで15曲以上手掛ける彼らは近年のシーンで傑出したアンダーグラウンド・ヒーローなのだ。
自身のレーベル、FEEDELITYから相棒のプリンス・トーマスとの二人三脚で既に5枚のシングルを発表。夜空に揺れるオーロラのように美しく浮遊するメロディをマルチな楽器スキルと緻密なプログラミングで時にダビーに、またある時はトランシーに飛ばす彼らの作品は早くからDJハーヴィーやイジャット・ボーイズ、チキンリップスらがヘヴィー・プレイでサポート。その衝撃は瞬く間に世界中へと伝わった。
そんな彼らが発表したアルバム『Lindstrom & Prins Thomas』はダンス・トラックとしてのみならず、ディスコ、ロック、ポップス、フォーク、ダブ、ブラジル音楽と、実に幅広い音楽がホーム・リスニングに耐えうる13曲に凝縮されていて、'05年のオルタナティヴなダンス・ミュージック・シーン屈指の傑作との声も。しかも、時を同じくして、彼らは日本のCRUE-Lレコーズとも交流を深めており、プリンス・トーマスは先頃発表されたCRUE-L GRAND ORCHESTRAのCDシングル「Psycho Piano」のリミックスを手掛けるなど、日本の音楽シーンにも攻勢をかけつつあるようだ。来年早々には来日も噂されている彼らの動向には今後注意していて欲しい。