05 11/10 UP
イギリスがもうすぐポンドからユーロに切り替わろうとするある日。信心深く、聖人に憧れる8歳の少年ダミアンがいつものように段ボールの隠れ家で聖人について思いを馳せていると、突然22万ポンドの札束の入ったバッグが降ってきた…。
『トレインスポッティング』『28日後…』のダニー・ボイルの最新作は〈少年〉と〈お金〉を巡る現代のファンタジー。この〈少年〉と〈お金〉は当然、〈聖〉と〈俗〉の対比であって、いたるところでこのテーマがほのめかされる。
貧しい人をわざわざ探してはお金をあげようとするダミアンの滑稽なまでのイノセンスと、弟の拾った大金を不動産に運用しようと画策する10歳の兄アンソニーのこれまたいささか滑稽な現実主義とを対比させるというベタといえばベタな構図ながら、2人を取り巻く世界のリアリティを要所要所できっちりと押さえ作品を地に足の着いたものにしているのは、ボイルならではか。
ハリウッド製の刺激の連続によるエンターテインメント性はないが、〈聖〉と〈俗〉を併せ持つ人間という生き物に対する、ややシニカルな、けれど優しい視線がイギリス映画らしい。
Text:Tetsuya
Suzuki