honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

YOSA『Magic Hour』

ディープなサウンドと絶妙なポップ・センスが交差するYOSA 1stアルバム

14 8/1 UP

text: KO

ヨーロッパ、日本国内のアンダーグラウンドなダンス・ミュージック・シーンにおいて質の高いトラックを
リリースしてきた新進気鋭のプロデューサー/DJ、YOSA。これまでの彼が得意としてきたディープな
ダンス・ミュージックのマナーをベースにしつつ、かつ同時に、意外な程、絶妙なポップ・センスを感じさせる
作品となった1stアルバム『Magic Hour』について、インタビューを敢行。

 

YOSA

DJ/Producer。高校時代をフランス、イギリスで過ごし、帰国と共にそのキャリアを開始。
数々の海外名門レーベルからリリースする傍ら、2011年にはDJとしてベルリン、フランクフルト、チューリッヒなど5都市において
ヨーロッパツアーを敢行。国内では渚音楽祭、Womb Adventure、Rainbow Disco Clubなどの大型フェスティバルから
全国各クラブに出演。2013年よりMASAYASU、WASHIOとともにパーティ/レーベル「ANDY」をスタート。

http://www.yosatokyo.net/

 

──
今作『Magic Hour』についてお聞きする前にまず、YOSAさんがこれまで聴いてきた、影響を受けてきた音楽について教えて下さい。
「母親がジャズ・ダンスの先生をしているのですが、ジャズのCDの他、クラブ・ジャズやTimmy Regisfordをはじめとしたガラージ・クラシックス等のCDが実家にあり、子供の頃は自然とそれらの音楽を耳にしながら育ちました。思春期の頃は、Dragon AshやSteady&Co.、SBK等の日本のミクスチャー・ロック、Oasisやblur等のブリット・ポップやオルタナ・ロックを好んで聴いていましたね。ダンス・ミュージックにハマり始めたのはイギリスに留学していた頃。近所に住んでいた黒人系のお兄さんがMadlibやJ DillaをはじめとしたStones Throw系のヒップホップやハウス・ミュージックを教えてくれたことがはじめです。その後、ハウス・ミュージックのBPM120前後で進行するビート感や、どこか憂いを帯びたサウンドがしっくりくるようになって、自分でもトラックを制作してみたいと思うようになりました」

──
これまでヨーロッパのダンス・ミュージック系のレーベルを中心に自身の楽曲をリリースされてきましたが、プロデューサーとしてのキャリアがスタートしたのはいつ頃からですか?
「トラック制作を始めて未だ間もない20歳前後の頃です。Steve Lawler(イギリスのハウス・ミュージック・プロデューサー/DJ)がBBC Radio 1で僕の楽曲をプレイしてくれたのですが、それ以降、色々なレーベルからライセンスのお話が来るようになりました。Ewan Pearson(The RaptureやDelphic等の楽曲を手掛ける、イギリスのプロデューサー/DJ)もドイツのテクノ・レーベルKOMPAKTからリリースしたミックスCDに僕の楽曲を使用してくれましたね。そのCDには福富幸宏さんの楽曲も収録されていたのですが、国内盤の宣伝文句に『唯一の日本人、福富幸宏の楽曲も収録!!』と書いてあり、『僕も日本人なんだけどな……』と少し落込んだ記憶があります(笑)」

 

──
これまでのYOSAさんの作品はディープ〜テック・ハウス、ミニマル等のフロアライクな楽曲がメインでした。しかし今作は、アンダーグラウンドなダンス・ミュージックのマナーを用いながらも、絶妙なポップ・センスを感じる作品に仕上げられていますね。
「これまではDJのためのフロアライクな音楽を主に制作してきましたが、1stアルバムではそうでない作品を作りたいと考えました。僕の中では”クラブ・ミュージック”と”ダンス・ミュージック”は別物だと考えていて、”クラブ・ミュージック”はその名の通り、クラブで抜群の威力を発揮する音楽、”ダンス・ミュージック”はより幅広いシチュエーションで機能する音楽だと思っています。そこで言うと、これまで僕は”クラブ・ミュージック”を中心に制作活動を行ってきましたが、今作ではフロアライクな音楽的マナーを用いつつも、ある一定のポピュラリティがある作品にしようと考えたんです。僕が尊敬するプロデューサーの一人に大沢伸一さんがいるのですが、大沢さんはご自身を『音楽的多重人格者』とおっしゃいますよね。エッジィな楽曲を作ることが出来る一方で、絶妙なポップ・センスを感じさせる楽曲も作ることが出来る。僕が大沢さんのようなプロデューサーを目指す、と言うとおこがましいですけれど、『音楽的多重人格』という言葉に表れるように、僕も色々な音楽的パーソナリティをこの作品に

反映させたかったんです。また、自分が聴いていて『ちょうど良い』音楽。どんなタイミングでも日常生活で少しだけ気分を上げてくれるような音作りを意識して、そのようなコンセプトを『MAGIC HOUR』というタイトルで表現しました」
──
日常生活で少しだけ気分を上げてくれる音楽、という部分で言うと、日常の光景を心地良いラップと歌で表現した3曲目“Coin Laundry feat. TOKYO HEALTH CLUB”や4曲目“SSAW feat. nagasaka, DONCHI & nonchi from ALT”が印象的です。
「日本語ラップと歌をフィーチャーしたこの2曲はこのアルバムでも核になる、またポップな雰囲気が溢れる曲です。今回アルバムを作る上で、自身のトラックに日本語ラップをのせる、ということはひとつ意識した点ですね。僕が普段活動しているアンダーグラウンドなダンス・ミュージックのシーンでは、楽曲に日本語ラップをのせる、ということはまずしません。音楽性を評価してもらう以前に、そもそも相容れないものとして捉えられているので。ただ今作では、自分の音楽的パーソナリティを打ち出すという意味で、日本語ラップは絶対にフィーチャーしたいと考えていたんです。というのも僕は、先程話した日本のミクスチャー・ロックやSteady&Co.、RIP SLYMEのような