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THINK PIECE

IT MIGHT GET LOUD

大久保篤志×北村信彦×滝沢伸介
3人のクリエーターが語る映画『ゲット・ラウド』

11 9/9 UP

photo:Shoici Kajino text:Shun Inoue

2011年9月9日より公開された映画、
『ゲット・ラウド ジ・エッジ、ジミー・ペイジ、ジャック・ホワイト×ライフ×ギター』。
そのタイトルの通り、U2のジ・エッジ、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジ、
そしてジャック・ホワイトが共演を果たす本作。
世代も音楽性も違う3人のギタリストが語り合い演奏する……、
まさに夢のようなロックドキュメンタリーに仕上がっている。
そこで今回ファッション界を代表して、スタイリスト界のドンこと大久保篤志、
ロックファッションの代名詞ヒステリックグラマーの北村信彦、
そして最近始めたバンド活動を精力的に行っているネイバーフッドの滝沢伸介という、
映画にも負けず劣らずの3人に揃ってもらった。
映画の主人公たち同様に歳の離れた3者は、どのように映画を捉えるのか。
実際に映画を上映しながらの対談がスタートした。

 

──
冒頭から、ジャック・ホワイトが度肝を抜いてくれますね。
北村信彦(以下: K )
「あの空き瓶と木材で作ったギターを見た時は、鳥肌がたった」
大久保篤志(以下: O )
「あれは最高だよね」
滝沢信介(以下: T )
「そんなに複雑じゃないし、自分でも作ってみたくなります」
K
「でもそういえば何ヶ月前に、『大人の科学 Vol.26』(学習研究社)を買ってミニギター作ったな。付録でギターキットが付いていて、簡単に作れるんだよ。テルミンも別の号であって作ったし。でもジャックみたいなのもカッコいいな……」
──
それでは、みなさんにとってこの3人はどんな存在ですか?
O
「俺にとってレッド・ツェッペリンは、スゴく思い入れがあるバンド。世代的にもドンピシャだしね。ジミー・ペイジが昔やっていた、アーガイルのニットにデニム、その上にヘリンボーンのツイードコートっていう格好を雑誌か何かで見て、一目惚れ。今ではなんて事ないコーディネイトだけど、昔は情報も少なかったからすごく衝撃的だった。頑張って、マネしていたな。レッド・ツェッペリンはさすがにないけど、U2(ジ・エッジ)もジャック・ホワイトも生で見たことが。特に最近行ったジャック・ホワイトがドラムをやっている、デッド・ウェザーのライブは本当にカッコ良かった」

K
「ちなみにそのライブは僕も一緒に行きました。デッド・ウェザーはスゴく良いバンド。その後に楽屋に入れてもらったんだけど、ジャックも気さくなヤツで、一緒に写真撮らせてもらった(笑)。U2は野外で聴きたいバンドってイメージかな。良い曲もたくさんあるけど、エフェクターを多用していたり、わりとデジタルな印象が強いから、やっぱりアナログなジャック・ホワイトの方が個人的には魅力を感じる。ちなみにジミー・ペイジは別格です(笑)」
T
「世代的にはU2は若い時にスゴく流行っていたけど、当時はなんだか恥ずかしくて聴かなかった。あの頃はヒップホップの方が多かったかな。もちろん今は聴いていますよ」
O
「ツェッペリンの話をすると、俺は『レッド・ツェッペリンII』が初めて買ったアルバムだった」
K
「僕は『レッド・ツェッペリンIV』ですね。あのアルバムには名作がたくさん入っていて、今でもよく聴きますよ」
──
ツェッペリンの話が出てきましたので、ジミー・ペイジの話をすると、映画の中盤で突然「胸いっぱいの愛を」のリフを弾き始めるシーンがあります。その時のジ・エッジとジャック・ホワイト、2人の表情はなんだか可愛かったですね。
O
「完全に子供みたいな顔をしていたよね(笑)。ジャックなんて冒頭でけっこう生意気なこと言っていたのに。でも目の前であれやられたら、誰でもあんな風になりそう」

 

K
「むしろ、あの2人はジミー・ペイジを前にしていても、よくあんなに堂々としていられるなって思うけどね。ビビっちゃうミュージシャンも多いんじゃないかな」
T
「でもジミー・ペイジも自分の部屋で、リンク・レイの『ランブル』を聴いていた時は無邪気でしたけどね」
O
「確かに。楽しそうだった(笑)。そして、あの部屋スゴい! 一面レコードやCDが並べられてて。あのジミー・ペイジの部屋を見れただけでも、かなり希少価値高いね」
K
「しかも『ランブル』って音数が少ない曲。あれにあんなに反応しちゃうジミー・ペイジって、本当に“音楽バカ”なんだろうね(笑)」
──
希少価値が高いと言えば、3人のルーツを辿る過去の映像は珍しいものが多かったですよね。
K
「ジミー・ペイジの若い頃の映像、よく残ってと思うよ。15歳の時の映像だったり、スタジオミュージシャンだった頃のものとか。意外と良い家の坊ちゃんだったのかな」
O
「ジ・エッジって、昔はなんだか芋臭い(笑)。アイルランドっていう環境もあったんだろうけど。でも、そこから頂点まで上り詰めて行った、彼のハングリーさがよく分かった。ジミー・ペイジの昔の映像を見ると、俺はついつい服に目がいっちゃうな。太畝のコーデュロイジャケットはどこで買っただろう、とかね(笑)」

──
エレキギターを取り上げた映画だけあり、3人のギターにまつわる話も数多く出てきますね。
O
「ジ・エッジが初めて買ったギターが、ギブソンのエクスプローラーだったのにはビックリした。なぜファーストギターにそれ、っていう衝撃が(笑)」
K
「そうですよね。最初のギターにエクスプローラーはないな。フェンダーのテレキャスターとかなら納得だけど。ジャック・ホワイトがホワイト・ストライプス時代に使っていたギターが、通販で買ったものっていうのも驚いた。ついついモノから揃えたくなっちゃうけど、どのギターを使うかってあんまり関係ないのかも」
T
「そのあと違うギターで考えつかないような改造しますよね。多分普通のギタリストなら絶対思いつかない」
K
「だからジャック・ホワイトの動向は目が離せないんだよな」
──
滝沢さんは最近組んだバンドでベースをやっているそうですが、元々ベース志望だったんですか?
T
「本当はギターをやりたかったんですけど、バンド内に3人もいたので、ベースにしました。でもこれを見ちゃうと、やっぱりギターにしとけば良かったなって思いますね。ベースの音ってメロディラインじゃなくてリズムを刻んでいるから、単品だとあんまり人に伝わりづらくて。この前も練習した曲を子供に弾いて聴かせていたんですが、『何やってるの』って言われちゃいました(笑)」