honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

A.N.T.I.

NITRAIDによる待望の新作『A.N.T.I.』

11 9/30 UP

photo:Kentaro Matsumoto text:honeyee.com

前作のスケートフィルム『RAIDBACK』でストリートシーンに一石を投じたNITRAIDが、
待望の新作『A.N.T.I.』をリリース。スケードボードだけでなく、ピスト、BMX、ストリートバスケと
4つのエクストリームスポーツを収録した渾身の作品が完成した。
グレードアップした今回の新作に、プロデューサーのXBS氏が込めた想いとは。

 

XBS

XBS1996年より活動をスタート。1999年に結成されたNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDでは、メンバーの1人として数多くのステージで活躍。アパレルブランド〈NITRAID〉のディレクターも務める。

 

──
前作のスケートフィルム『RAIDBACK』から約2年。今回の新作『A.N.T.I.』ではスケートボードだけでなく4つのエクストリームスポーツを収録したものにアップグレードされていますが、その進化にはなにか狙いや理由があったのでしょうか。
「ある部分ではタイトルの『A.N.T.I.』という部分に集約されているところがあります。いわゆるストリートものっていうのはたいてい社会には適合していかないものじゃないですか。スケボーもやる場所が限られているし、ピストも最近は環境がどんどん厳しくなっている。歴史のあるBMXだってレベルは高くてもなかなかフォーカスされない。ストリートバスケだって光はなかなか当たらないけど、人生かけて本気でやっている奴らだっている。僕らストリートブランドの在り方として、そういう限られたカルチャーをプッシュアップしていければいいというのがまずあります。音楽もそうなんですけれど、僕からするとみんな似ていて、ラッパーだろうがスケーターだろうが、ライダーだろうが、ストリートボーラーだろうが、そういう“ストリートカルチャー”に根ざした根本的なところを今回はパッケージしたかったっていうのが大きなところです。だからある意味狙ったというよりは、ごく自然に広がったという感じですね」
──
キャスティングはどういった形で?
「スケートボードは<NITRAID SB>。BMXは元々僕らとつながりがある人が一人いて、チームとまで堅苦しくは行かないけどサポートしようと。ピストに関してはもともと深く親交のあった<FAR EAST SMOKIN’ SKIDDERZ>。彼ら自身もDVD出したばかりなんですが、このカテゴリーを任せるなら彼ら以外になかったですね。バスケは僕が個人的に見ているいろんなプロの団体からストリートボールの団体まで含めて、そこから僕がピックしてトーナメントを開催したという感じです」
──
<NITRAID>選抜という感じですね。
「というか、自然に集まってきた感はあります。僕らが掲げている“ANTI”というコンセプトの部分に共感を持ってくれた人たちがいる。逆に言えば元々そこにいた人たちを今回こういう形で僕らが区切っただけといっても良いかもしれないですね」
──
作品を作る上では、4つのカテゴリーをひとつにまとめるための具体的なイメージやコンセプトなどはもともとあったんでしょうか。
「特にそんなにトータルで意識しすぎることもなかったです。さっきも言ったように“ANTI”という部分でみんな向いている方向は同じだから多くの説明の必要もなく、スタートから既にそれぞれの中に共通の答えがあったという感じ。あとは各セクションが本気でやってもらえればだいたいシーンは固まる。曲も全てMACKA-CHINのオリジナルプロデュースで、それぞれのイメージに合わせて曲を作ってもらって、撮影と同時進行でどうはめていくかというやり方です。だから僕らとしては、そういうスタイルで頑張っている人たちをどう披露していけるかって言うところが大きなポイントでしたね」

 

──
これは各セクションが平行して同時に進行していったんですか?
「そうです。長い時間かけてとっていくものとそうでないものがあるので。逆にバスケなんかはトーナメントなので1日だし。スケボーはもっとかなり早くとり始めていました。場所や時間帯に一番制限があるカテゴリーだからやっぱり大変ですよね」
──
エンドロールに流れるメイキングではスケートボーダーが危うく車に轢かれそうなシーンもありましたが、あれは演出じゃなく?
「あれは本当に危なかったですね。あれだけじゃなく、ほかにもたくさんきわどいNGシーンがあります。奇麗な部分だけじゃなく、そういうNGな部分も見せられたらなと」
──
本編を見ているだけだとスタイリッシュさが全面に出ていますが、ああいうNGシーンにこそ本当の気合いみたいなものが見えますよね。
「そういう意味ではどのセクションに関しても編集作業は大変でしたね。どれだけ良いシーンだけを厳選していくか。どれだけ現場の熱を伝えていけるか。それが本当に難しかった。それと最終的に曲が出来上がって、曲のイメージがはっきり見えて、それと映像をすりあわせていく難しさもかなりありました。現場では音が無いまま撮っているのでね。曲をもらってから映像をはめて、それに合わせて曲をまた修正して、それを貰って映像をはめ直して……。音楽プロデューサーのMACKA-CHIN的にはかなりハードな作業にはなったと思います。特にスケートボードのセクションはトータルで14分の楽曲が必要だったんで。14分のシークエンスをやり直すっていうのはかなりの作業ですから」
──
その辺のこだわりというのは、やはり前作『RAIDBACK』で手応えを感じた上でのさらなるブラッシュアップと捉えていいですか?
「やっぱり前作の反響は凄かったですよ。名古屋でイベントとデモを同時にやって、それもかなり盛り上がったし、そこからその勢いが全国的に波及していく感じもある。その映像もボーナスに入っているので見てほしいんですが、つまり僕らがどうっていうのではなくて、それぞれのエクストリームスポーツのシーンが活性化されることがすべてだと思っています。そういう意味で言えば前作『RAIDBACK』はスケート界に一石を投じた作品になったと思いますし、やっぱりそれがある分、今回はさらなる変化も狙っているし、皆が期待できるような、各種目の熱さが伝わってくる作品にはなっていると思います」