15 12/04 UPDATE
ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを継承し、4作目となる作品。クレイグといえば筋肉美で知られ、無駄に脱ぐシーンが常に多いのだが、今回はタイトルバックで一瞬脱いでいるだけである。でも007史上、美女のシルエットをあしらってきたタイトルにおいて、ボンド自身が脱いでいるのは初めてじゃないだろうか。
オープニング、メキシコの「死者の日」を舞台に殺人が行われる場面の、移動を伴う長回しは目を奪われる。そして物語は、3作目の『スカイフォール』からボンド自身の生い立ちが関わってくるのだが、今回もボンドの幼少期や父親の問題が悪と絡んでいく。
本作のボンドガールは、歴代最年長と話題のモニカ・ベルッチ。殺された犯罪者の元妻として、喪服姿で登場し大人の色香を放つ。だが、ボンドとのセクシーなラブシーンの導入は印象に残るが、意外にも出番はそこまで。そのかわり、今回のメインのボンドガールはレア・セドゥだ。個性が強く、普通の美女とは一線を画す存在感が、映画を牽引していく。
前作から揃った仲間との密度も増している。ボンドの上司役Mであるレイフ・ファインズも渋いし、なんといってもIT系に強く、ボンドの秘密兵器を作るQ役のベン・ウィショー。これまでのQは高齢者だったのに、『スカイフォール』から突然、華奢なメガネ美青年の登場。今作では、前作より007とQの交流が増しているのが、ボンドガールとの関係よりも気になるという特異な立ち位置で、ベン・ウィショーのQはもっとも魅力的なレギュラーとなった。他にも、以前からMの秘書でマネーペニーというキャラもいるのだが、ダニエル・クレイグ版からこの役を演じるナオミ・ハリスも、ボンドとの友人以上恋人未満のような関係が、ナオミ・ハリスの美貌もあって結構キュンとくる。
悪役側は、イギリスの国家安全保障局の新しいトップを演じるのが、『SHERLOCK』のモリアーティ役で知られるアンドリュー・スコット。そして悪の組織スペクターを率いるのはクリストフ・ヴァルツだ。ダニエル・クレイグ版007の、歴代の悪役を束ねていた黒幕登場であり、俳優の演技合戦を見ているだけでも興味深い。
今年はスパイ映画の年であった。最大の〆がこの『スペクター』であり、興行収入では、先行した『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』がスパイものではトップだ。そのどちらも、ボンドが所属する00課と、『ミッション~』ではイーサン・ハント(トム・クルーズ)の所属するIMFが、解体の危機に晒されてしまう。共に脂の乗ってきたシリーズが、偶然にも同じテーマとなったことで、見比べるのも面白い。
本作を見終わって気になるのは、ダニエル・クレイグの007続投はあるのか?ということだ。ほとんど内容的には総括となっているのだが、続ける余地も残されていて、見終わったとたんにクレイグボンドの今後が猛烈に気になる作品である。
text: Yaeko Mana
『007 スペクター』
監督:サム・メンデス
製作総指揮:カラム・マクドゥガル
製作:バーバラ・ブロッコリ/マイケル・G・ウィルソン
出演:クリストフ・ワルツ/レア・セドゥー/レイフ・ファインズ/モニカ・ベルッチ
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
公開中
http://www.007.com/spectre/?lang=ja
SPECTRE © 2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc., Danjaq, LLC and Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.